個人からの借金 時効は5年か10年か 民法の条文で成立・更新・援用を解説

友人・知人・親族など個人に貸したお金の時効について、貸した側の立場で整理した記事です。結論は、貸したお金を返してもらう権利(債権)の時効が権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年(民法166条1項)であり、請求や裁判所の手続、相手の承認によって時効の扱いが変わる、ということです。

この記事では、時効の期間、時効を止める方法、期限を決めていない貸し借り、債務者が亡くなった場合、2020年4月1日より前の債権の扱い、回収の手続までを、民法(e-Gov)・法務省・裁判所などの公式情報で確認できた範囲で整理します。確認日は2026年10月2日です。体験談や独自の統計は使っていません。時効を「いつから数えるか」など断定しにくい点は、専門家に確認する前提で書いています。

先に結論
  • 時効の期間は、権利を行使できると知った時から5年、または行使できる時から10年(民法166条1項)。
  • 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をすることができません(民法145条)。期間が過ぎただけで結論が決まるわけではありません。
  • 請求(催告)で6か月間は時効が完成しません(150条)。裁判上の請求・支払督促・調停などでも手続中は完成せず(147条)、相手が返す義務を認める承認があると新たに進行します(152条)。
  • 返済期限を決めていない場合、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができます(591条1項)。時効を数え始める時点は事情で変わるため、専門家に確認してください。
  • 2020年4月1日より前に債権が生じた場合などは、消滅時効期間について原則として改正前の民法が適用されます(法務省の資料)。
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目次

個人からの借金 時効成立の基礎知識

借用書なしの時効全般

民法166条1項は、債権は次の場合に時効によって消滅すると定めています。

  • 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使できる時から10年間行使しないとき

お金の貸し借り(消費貸借)は、借りた人が種類、品質及び数量の同じ物で返すと約束し、相手から金銭その他の物を受け取ることで効力を生ずると、民法587条に定められています。この条文には、借用書が効力の条件として出てきません(書面でする消費貸借は587条の2に別の定めがあります)。借用書がなくても、貸したお金を返してもらう権利は債権であり、時効は166条1項で考えます。

なお、時効の期間は借用書の有無で変わると民法166条1項には書かれていません。借用書がない場合に問題になりやすいのは、時効ではなく貸したことを裏づける証拠です。裁判所の手続では、言い分を裏づける文書(書証)の写しを提出します。借用書がなければ、振込の記録やメッセージなど、貸した日・金額・返済の約束が分かるものを残しておきましょう。

借用書ありの効力と証拠力

借用書は、貸したことと返す約束があったことを示す証拠の1つです。ただし、借用書があるからといって時効が進まなくなるわけではありません。時効期間は、借用書の有無にかかわらず166条1項で数えます。

借用書には、貸した日、金額、返済期限、貸主と借主の氏名、作成した日を事実どおりに書いておくと、後で確認しやすくなります。借用書を公正証書にする方法もあります。裁判所の債権執行のページには、債務名義が公正証書の場合の手続が書かれており、強制執行に使える場合があります。どのような内容にすれば強制執行に使えるかは、公証役場や弁護士に確認してください。

借用書を偽造・変造されたと疑うときは、刑法159条(私文書偽造等)や161条(偽造私文書等行使)に当たる可能性があります。警察に相談する場合の考え方は、後の「警察へ相談すべきケース」で説明します。

借用書に返済期限がない場合の時効

民法591条1項は、当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができると定めています。期限のない貸し借りでも、返してほしい時期を示して請求できます。期間が「相当」かどうかは事情によるため、請求の日付と内容は記録に残しましょう。

時効の期間は、期限の定めがない場合も民法166条1項(知った時から5年・行使できる時から10年)で考えます。次の点に注意してください。

  • 民法166条2項の20年は、「債権又は所有権以外の財産権」についての定めです。貸したお金の返還を求める権利は債権なので、「10年(166条2項)」ではなく、1項で考えます。
  • 期限の定めがない貸し借りで、時効をいつから数え始めるか(貸した時か、催告から相当期間がたった時かなど)は、条文だけでは断定できません。事情による判断が必要なので、時効が近いかもしれないと感じたら、早めに弁護士や法テラスで確認してください。

個人間借金の法定返済期限

返済の時期は、まず当事者の取り決めで決まります。取り決めがない場合の扱いとして、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができ(民法591条1項)、借主は返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還できます(同条2項)。

時効を止める・やり直す手段

時効の期間を数えるうえで大切なのが、時効を止める(完成猶予)手段と、時効をやり直す(更新)手段の違いです。完成猶予は「一定の間、時効が完成しない」こと、更新は「その時から時効が新たに進行を始める」ことです。条文の書き分けは次のとおりです。

できること条文時効への影響
請求(催告)150条その時から6か月を経過するまで時効が完成しません(完成猶予)。猶予されている間の再度の催告に、猶予の効力はありません。
書面での協議の合意151条合意から1年を経過した時、合意で定めた協議期間(1年に満たないもの)を経過した時、協議続行を拒絶する書面の通知から6か月を経過した時のうち、いずれか早い時まで完成しません(完成猶予)。ただし、催告で猶予されている間にした合意や、合意で猶予されている間にした催告には、猶予の効力はありません(3項)。
裁判上の請求・支払督促・調停など147条手続が終わるまで完成しません。権利が確定しないまま終わった場合は、終了から6か月を経過するまで(完成猶予)。確定判決などで権利が確定したときは、手続が終了した時から新たに進行します(更新)。確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利は、10年より短い時効期間の定めがあるものでも、時効期間が10年になります(169条1項。確定の時に弁済期が来ていない債権は除く)。
強制執行・財産開示など148条手続が終わるまで完成せず、終了した時から新たに進行します(更新)。申立ての取下げなどで終わった場合は、終了から6か月を経過するまで完成しないだけで、更新はありません。
相手が返す義務を認める(承認)152条1項その時から新たに進行します(更新)。

上の表は改正後の民法の規定です。2020年4月1日より前の債権は、この後の「2020年4月1日より前に貸したお金の時効」の節を確認してください。

債務者が返済の一部をしたり、返すと約束したりした場合に、それが「承認」に当たるかどうかは、具体的な事情で判断されます。承認を記録に残すと、後の証拠になります。

また、時効は援用されて初めて問題になります。民法145条は、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。期間が過ぎたというだけで「もう請求できない」と決めつけず、事情を専門家に確認してください。

借用書なしで債務者が死亡した場合

債務者が亡くなると、相続人は相続開始の時から、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条。亡くなった人の一身に専属したものは除く)。貸したお金の返済義務も、相続の対象になる場合があります。

  • 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純承認・限定承認・放棄をしなければなりません(915条1項。この期間は家庭裁判所で伸ばせる場合があります)。
  • 相続を放棄した人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。
  • 相続財産については、相続人が確定した時、管理人が選任された時、破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまで、時効が完成しません(160条)。

借用書がない場合は、貸したことを示す振込の記録やメッセージなどが重要になります。相続人が誰か、放棄した人がいるか、相続人にどう請求するかは事情で変わるため、弁護士や法テラスに早めに相談してください。

2020年4月1日より前に貸したお金の時効

法務省の資料によると、改正民法は2020年4月1日に施行され、「施行日前に債権が生じた場合」または「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間は、原則として改正前の民法が適用されます。上記のいずれにも当たらない場合は、改正後の民法が適用されます。

本文で説明した「5年・10年」は改正後の民法166条1項の内容です。古い貸し借りでは当てはまらない場合があるため、貸した時期が2020年4月1日より前のときは、専門家に確認してください。

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個人からの借金 時効の前にできる対応策

親子間のお金の貸し借りと時効

親子間でも、お金を返してもらう約束で渡したのなら消費貸借(民法587条)であり、時効は一般の貸し借りと同じく166条1項で考えます。一方、贈与は、財産を無償で相手に与える意思を示し、相手が受け取る意思を示すことで成立します(549条)。「貸した」のか「あげた」のかで争いになりやすいため、返す約束を示す記録(借用書、振込の記録、メッセージ)を残してください。

未成年者や相続、夫婦間の権利など、特別に時効の完成が猶予される場合もあります(民法158〜160条)。事情によっては専門家に確認してください。

友人への貸し金の時効問題

友人間の貸し借りも、時効は民法166条1項で考えます。友人同士では「貸した」のか「あげた」のか、金額の認識が違うなど、貸したことの証明が問題になりがちです。返済を求めるときは、貸した日・金額・返してもらった額・支払ってほしい期限を事実どおりに伝え、書面やメッセージで記録を残してください。

請求(催告)をすると6か月間は時効が完成しませんが(150条)、請求を繰り返しても猶予が延びるわけではありません(同条2項)。6か月以内に、裁判上の請求・支払督促・調停など(147条)の手続をとるか、相手に返す義務を認めてもらう(承認。152条)ことを検討する必要があります。なお、催告で時効の完成が猶予されている間に書面で協議の合意をしても、その合意に完成猶予の効力はありません(151条3項)。相手が返す義務を認めるメッセージを送ってきた場合は、承認に当たる可能性があるため、消さずに保存しておきましょう。

警察へ相談すべきケース

兵庫県警察のQ&Aは、私人間の民事問題について、警察はみだりに介入することはできないとしています。一方、民事の紛争が背景にあっても、個々の行為が犯罪などに当たる場合は取り締まるとしています。

刑法246条の詐欺は「人を欺いて財物を交付させた」場合です。初めから返すつもりがないのにうそをついて借りた場合などは、警察に相談できる可能性がありますが、返済が遅れているだけでは直ちに当たるとは限りません。判断は警察が行います。迷うときは相談専用電話#9110があります。警視庁のページでは、相談内容に応じて窓口を案内するとされ、通常の通話料金がかかります。

貸した側が気をつけたいのは、取り立ての方法です。次の行為は刑法の犯罪に当たる可能性があります。

  • 脅迫(222条)・強要(223条)・恐喝(249条):害を加えると告げて脅し、義務のないことをさせたり、財物を渡させたりする
  • 住居侵入等(130条):正当な理由なく住居に入る、退去を求められても退去しない
  • 名誉毀損(230条):公然と事実を示して名誉を傷つける(事実かどうかを問わない)

差し押さえ手続きのポイント

判決や和解調書どおりにお金が支払われない場合などは、裁判所の債権執行で、債務者の給与や銀行預金などを差し押さえられます。裁判所のページによると、ポイントは次のとおりです。

項目裁判所のページに書かれている内容
必要なもの債務名義(判決、和解調書、民事調停調書、公正証書、仮執行宣言付支払督促など)。種類によって執行文などが必要です。
申立先原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所。少額訴訟の判決などの場合は、その簡易裁判所でも申し立てられます。
費用手数料は原則として4000円と郵便料。
給料の差押え原則として給料の4分の1(月給が44万円を超える場合は33万円を除いた金額)。すでに退職している場合などはできません。
取立て差押命令が債務者に送達されて1週間後(給料の差押えは養育費などを除き4週間後)から。

債務者の財産がどこにあるか分からない場合は、財産開示という手続があります(手数料は1個の申立てにつき2000円と郵便料)。執行力のある債務名義を持つ金銭債権の債権者が、債務者に裁判所へ出頭してもらい、財産の状況を陳述してもらう手続です。開示された財産に強制執行するには、別に申立てが必要です。

債権回収の具体的手段

裁判所や日本郵便の公式情報で確認できる、主な手段は次のとおりです。

手段公式ページに書かれている内容注意点
内容証明郵便(日本郵便)いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを日本郵便が証明。一般書留とする必要があります。証明するのは文書の存在で、内容が真実かは証明しません。請求(催告)の記録として使えますが、支払いを強制する手続ではありません。
支払督促(簡易裁判所の書記官)書類審査のみで、債務者が受け取って2週間以内に異議を出さなければ、仮執行宣言の申立てを経て強制執行の申立てができます。異議が出ると通常の訴訟に移ります。仮執行宣言の申立てには期間があります。
少額訴訟(簡易裁判所)60万円以下の金銭の支払を求める訴えで、原則1回の審理です。最初の期日までにすべての言い分と証拠を出す必要があります。控訴はできません(異議のみ)。
民事調停(簡易裁判所)調停委員を交えた話し合い。申立てに特別の法律知識は必要なく、手数料は訴訟より低額とされています。合意できなければ、調停に代わる決定または不成立で終了します。
通常訴訟(裁判所)双方の言い分と証拠を調べ、判決で解決。途中で和解もできます。不服は判決送達日から2週間以内に控訴します。

認定司法書士は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない簡易裁判所の訴訟や支払督促などを代理できます。強制執行は原則として代理できません(司法書士法3条、裁判所法33条1項1号)。制度や相談機関の案内は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時・土曜9時〜17時、祝日・年末年始を除く)で受け付けています。個別の法律相談はできません。

まとめ 個人からの借金 時効の判断ポイント

  • 時効は、知った時から5年、行使できる時から10年(民法166条1項)
  • 期限のない貸し借りでも、時効は166条1項。2項の20年は債権の時効ではない
  • 期限を決めていない場合、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができる(591条1項)
  • 催告は6か月の完成猶予(150条)、裁判上の請求などは手続中の完成猶予(147条)、承認は更新(152条)
  • 催告で猶予されている間にした書面の協議合意に、猶予の効力はない(151条3項)
  • 判決などで確定した権利の時効期間は10年(169条1項)
  • 時効は当事者が援用しなければ裁判所が裁判できない(145条)
  • 2020年4月1日より前の債権は、改正前の民法が適用される場合がある
  • 借用書の有無で時効期間は変わらないが、貸したことの証拠は残す
  • 債務者が亡くなった場合は、相続人・相続放棄・時効の完成猶予(896・915・939・160条)を確認する
  • 取り立ては、脅迫・強要・恐喝・住居侵入・名誉毀損に当たらない方法で行う
  • 起算点などで迷うときは、弁護士や法テラスに早めに相談する
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よくある質問

個人からの借金の時効は何年ですか?

貸したお金を返してもらう権利の時効は、民法166条1項により、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年です。請求(催告)で6か月間は完成せず、裁判所の手続中も完成しません。相手が返す義務を認めると新たに進行します。

個人からの借金は、時効の期間が過ぎれば自動的に消えますか?

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をすることができないとされています(民法145条)。期間が過ぎただけで結論が決まるわけではないため、時効かもしれないと思ったときは、弁護士や法テラスに確認してください。

返済期限を決めていない貸し借りの時効は、いつから数えますか?

期限を決めていない場合、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができます(民法591条1項)。時効の期間は166条1項で考えますが、いつから数えるかは事情による判断が必要で、断定できません。早めに弁護士や法テラスで確認してください。

借用書がなくても、個人からの借金に時効はありますか?

時効は債権について定められており、借用書の有無で期間が変わるとは民法166条1項に書かれていません。借用書がないと、貸したことを裏づける証拠(振込の記録やメッセージなど)が裁判で問題になりやすい点は別の話です。

時効を止めるには、どうすればよいですか?

請求(催告)をすると6か月間は完成せず(民法150条)、裁判上の請求や支払督促、調停などでも手続中は完成しません(147条)。相手が返す義務を認めると、その時から新たに進行します(152条)。どの方法が合うかは弁護士や法テラスに相談してください。

2020年4月1日より前に貸したお金の時効も、5年か10年ですか?

法務省の資料によると、2020年4月1日の施行日より前に債権が生じた場合などは、消滅時効期間について原則として改正前の民法が適用されます。古い貸し借りは、期間が異なる場合があるため専門家に確認してください。

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出典

更新履歴

  • 2026年10月2日:時効に関する記載を民法の条文に沿って見直し、先に結論とよくある質問を追加しました。
  • 2026年10月2日:催告で猶予されている間の協議の合意の説明(151条3項)、確定した権利の時効期間(169条)、強制執行等による更新(148条)を追記しました。
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