自己破産を考えるとき、「手続の間、引っ越しや旅行はできるのか」「郵便物はどうなるのか」「仕事に影響はあるのか」が気になる人は多いはずです。この記事では、破産法の条文と、法テラス、JCCO、千葉地方裁判所の案内をもとに、手続中に受ける制限、99万円以下の現金など手元に残る財産、資格制限と復権、手続の流れを整理します。
- 破産手続が終わるまでの間、職業・転居・長期の旅行などで、一定の制限を受ける場合があります(法テラス)。居住地を離れるには裁判所の許可が必要です(破産法37条)。
- 管財事件では、破産者あての郵便物が破産管財人に配達されることがあります(81条)。
- 99万円以下の現金などは手元に残せます。選挙権がなくなる、戸籍に載る、預金口座が使えなくなる、ということはありません(法テラス)。
- 資格の制限は、免責決定が確定すれば解除されます。任意整理にはこうした制限がありません。
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自己破産の手続中に受ける制限
法テラスの「破産のメリット・デメリットは何ですか。」には、デメリットとして、破産手続が終了するまでの間、職業・転居・長期の旅行等について、一定の制限を受ける場合がある、と書かれています。同時に、自己破産をしたからといって、選挙権がなくなる、戸籍や住民票に記載される、銀行の普通預金口座も使用できなくなる、ということはない、と説明されています。破産法が定める主な制限は、次のとおりです。
| 制限 | 根拠(破産法) | 内容 |
|---|---|---|
| 居住地 | 37条 | 破産者は、申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない |
| 郵便物 | 81条 | 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、破産者あての郵便物等を破産管財人に配達するよう、信書の送達の事業を行う者に嘱託できる。破産者の申立てなどで取消し・変更ができ、破産手続が終了したときは取り消される |
| 説明義務 | 40条 | 破産者は、破産管財人の請求や債権者集会の決議に基づく請求があったとき、破産に関し必要な説明をしなければならない |
| 財産 | 34条 | 破産手続開始の時に有する一切の財産は破産財団となる。ただし、99万円(民事執行法131条3号の額の1.5倍)の金銭、差し押さえることができない財産などは含まれない |
JCCOも、自己破産について、破産管財人が選任されたときは、居住の制限・信書の秘密の制限を受け、破産手続開始の決定があった場合には、財産の処分権を失う(開始決定後に取得した財産は制限されない)、と説明しています。破産管財人が選任される管財事件と、選任されない同時廃止の違いは自己破産の費用はいくら?で解説しています。
99万円以下の現金は手元に残せる:自由財産と、その拡張
破産法34条1項は、破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産を破産財団とします。同条3項は、民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭(法テラスの説明では99万円以下の現金)と、差し押さえることができない財産は、破産財団に属しない、と定めています。差し押さえられない財産の具体例は差し押さえられないものは?で整理しています。
同条4項は、裁判所が、破産手続開始の決定があった時から決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間、破産者の申立てにより、または職権で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時に有していた財産の種類と額、収入を得る見込みなどを考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる、と定めています(5項で破産管財人の意見を聴く)。
資格制限と、復権
千葉地方裁判所は、破産手続開始決定を受けると、宅地建物取引士、旅行業務取扱管理者、警備員、保険外交員などになることができなくなるが、その後、免責決定が確定すれば、この制限は解除される、としています。
破産法255条1項は、破産者が復権する場合を定めています。免責許可の決定が確定したとき(1号)、破産手続廃止の決定が確定したとき(2号)、再生計画認可の決定が確定したとき(3号)、破産手続開始の決定後、破産法265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき(4号)などです。復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによります(同条2項)。免責取消しの決定または再生計画取消しの決定が確定したときは、その復権は、将来に向かって効力を失います(同条3項)。免責が許可されない場合や、免責されない債権は免責不許可事由とは?、自己破産の全体像は自己破産のメリット・デメリットで解説しています。
手続が終わるまでの流れと、気をつけること
法テラスの「破産の手続について教えてください。」によると、破産手続開始決定のあと、管財事件では、裁判所が選任した破産管財人が、一定の財産を換価して債権者に平等に分配します。換価する財産がなく、調査も不要な場合は、破産管財人を選任せずに、破産手続開始と同時に手続が終了します(同時廃止)。その後、免責許可決定を行い、免責許可決定が官報に掲載されてから2週間が経過した時点で確定します。官報については自己破産・個人再生は官報に載る?で解説しています。
- 引っ越しや長期の旅行:破産管財人が選任されている間は、居住地を離れるのに裁判所の許可が必要です(37条)。事前に、依頼した弁護士・司法書士に確認する
- 郵便物:破産管財人に転送される場合があります(81条)。債権者や役所からの郵便物も含め、管財人から確認を求められることがあります
- 説明を求められたとき:事実を隠さず、正確に説明する(40条)。虚偽の説明は、免責不許可事由になりえます(252条1項8号)
手続中にしてはいけないこと(免責に響く行為)
破産法252条1項は、免責不許可事由として、債権者を害する目的で財産の隠匿・損壊などをしたこと(1号)、特定の債権者にだけ担保の供与や弁済をしたこと(3号)、帳簿や書類を隠滅・偽造・変造したこと(6号)、虚偽の債権者名簿を提出したこと(7号)、破産手続における裁判所の調査で、説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと(8号)、破産管財人の職務を不正の手段で妨害したこと(9号)などを挙げています。同条2項により、これらに該当しても、裁判所が、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当と認めるときは、免責許可の決定をすることができます(裁量免責)。
千葉地方裁判所も、免責不許可事由があるときでも、事情によっては、裁判所の判断で免責を許可する場合があり、大切なのは、申立書の作成や裁判官との面接の際に、裁判所に対して本当の事実を明らかにすることだ、と説明しています。財産や借入れの状況を隠したり、一部の債権者だけに返済したりせず、依頼した弁護士・司法書士に、すべてを正直に伝えてください。
相談先と、他の方法との比較
これらの制限は、自己破産に特有のものです。任意整理は、法テラスによると、職業・転居・長期の旅行等について一定の制限を受けることがありません。個人再生でも、法テラスの説明には、このような制限は書かれていません。方法の比較は債務整理4種類の違いで解説しています。
相談は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)や、JCCOの多重債務ほっとライン(0570-031640)、弁護士会・司法書士会の窓口でできます(JCCOの無料借金相談)。費用が心配なときは債務整理の費用が払えないときで整理した法テラスの立替制度があります。「借金をゼロにします」と持ちかけて先に手付金を取る「整理屋」などの悪質業者には注意してください。「審査なし」をうたう業者や個人間融資、給与ファクタリングも、貸金業の登録がない違法な貸付である可能性が高いため、使わないでください。
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支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。
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※相談しても必ず減額できるとは限りません。債務整理を依頼する場合は所定の費用がかかります。
まとめ
- 自己破産の手続中は、職業・転居・長期の旅行等で一定の制限を受ける場合がある(法テラス)。
- 居住地を離れるには裁判所の許可が必要(破産法37条)。管財人が選任されると、郵便物が管財人に配達されることがある(81条)。
- 破産者は、破産管財人などの請求があったとき、必要な説明をしなければならない(40条)。
- 99万円以下の現金は手元に残せる。選挙権、戸籍、預金口座には影響しない。
- 免責許可の決定が確定すれば復権し、資格制限は解除される(255条)。
よくある質問
自己破産すると、引っ越しや旅行はできなくなりますか?
破産法37条は、破産者は、申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない、と定めています。法テラスも、破産手続が終了するまでの間、職業・転居・長期の旅行等について、一定の制限を受ける場合がある、と説明しています。
自己破産すると、郵便物はどうなりますか?
破産法81条により、裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、破産者あての郵便物等を破産管財人に配達するよう嘱託することができます。破産手続が終了したときは取り消されます。
破産しても、手元に残せる現金はありますか?
法テラスは、99万円以下の現金は手元に残せる、と説明しています。破産法34条3項は、民事執行法131条3号の額の2分の3を乗じた額の金銭などは破産財団に属しない、と定め、4項で裁判所が範囲を拡張できる場合を定めています。
破産すると、仕事に就けなくなりますか?
千葉地方裁判所によると、破産手続開始決定を受けると、宅地建物取引士、旅行業務取扱管理者、警備員、保険外交員などになれなくなりますが、免責決定が確定すれば、制限は解除されます。
復権とは、何ですか?
破産者が、破産によって受けた資格の制限などから回復することです。破産法255条1項は、免責許可の決定が確定したときなどに、破産者は復権する、と定めています。
出典
- e-Gov法令検索「破産法」(第34条、第37条、第40条、第81条、第252条、第255条)
- 法テラス「破産のメリット・デメリットは何ですか。」
- 法テラス「破産の手続について教えてください。」
- JCCO「自己破産」
- 千葉地方裁判所民事第4部「破産・免責手続について―よくあるご質問・お問い合わせ―」
更新履歴
2026年10月9日:記事を公開しました。
