厚生労働省の公式情報によると、令和8年(2026年)10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が事業主の義務になりました。令和7年6月の労働施策総合推進法の改正により、会社は、顧客などからの著しい迷惑行為から労働者を守るために、方針の明確化と周知、相談窓口の整備、事後の迅速な対応、悪質な行為への対処の方針などの措置を講じなければなりません。お客さんや取引先からの言動で働くのがつらい人は、一人で抱え込まず、上司や社内の相談窓口に報告・相談することが大切だとされています。
この記事は、接客・販売・窓口・電話対応などの仕事でクレームやしつこい要求に悩んでいる人、パート・アルバイトで客からの暴言を受けた人に向けて、厚生労働省Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月20日掲載)、山形労働局のお知らせ、「確かめよう労働条件」Q&A(しつこくクレームをつけてくる客への対応)で確認できた内容を、法律上の定義・会社に求められる措置・働く側ができることの順にまとめたものです(2026年10月9日確認)。
- 令和8年10月1日から、カスハラ対策が事業主の義務になりました(求職者等へのセクハラ対策も同日から義務)。
- カスハラは、①顧客等の言動で、②社会通念上許容される範囲を超えたもの(内容が相当でない、または手段・態様が相当でない)により、③労働者の就業環境が害されるものの3つをすべて満たすものです。
- 「顧客等」には、購入者・利用者のほか、取引先の担当者、施設の利用者、今後利用する可能性がある人も含まれます。電話やSNSでの言動も対象です。
- 会社の措置は、方針の明確化・周知、相談窓口の整備、事後の迅速かつ適切な対応、悪質な行為の抑止措置、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止です。
- 被害にあったら、一人で抱え込まず、速やかに上司や相談窓口に報告・相談します。暴力やセクハラ行為を受けたときは、すぐ現場監督者に引き継ぎ、一人で対応しないことが重要とされています。
カスタマーハラスメントとは?法律上の3つの要件
厚生労働省Webマガジンによると、今回の法改正では、職場におけるカスタマーハラスメントについて、次の3つをすべて満たすものと規定されました。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①顧客等の言動 | 顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の事業に関係を有する者の言動 |
| ②社会通念上許容される範囲を超えた | 内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないもの |
| ③就業環境が害される | 労働者の就業環境が害されるもの |
「顧客等」に含まれる人
- 商品の購入者やサービスの利用者のほか、取引先の担当者(いわゆるBtoB)、駅・病院・学校・公共施設などの施設の利用者。
- 実際の購入者・利用者だけでなく、今後商品の購入やサービスの利用をする可能性がある人も含まれる。
- 対面のやり取りに限らず、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も対象。
「社会通念上許容される範囲を超えた」言動の例
| 区分 | 例(厚生労働省) |
|---|---|
| 内容が相当でない | 商品やサービスと全く関係のない要求、契約等で想定しているサービスを著しく超える要求、対応が著しく困難または不可能な要求、不当な損害賠償要求 |
| 手段・態様が相当でない | 暴行や傷害といった身体的な攻撃、暴言・侮辱などの精神的な攻撃、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、長時間の居座りなどの拘束的な言動 |
判断にあたっては、業種・業態や業務の内容・性質、労働者の属性や心身の状況など、さまざまな要素を総合的に考慮するとされています。なお、障害者から労働者に対して、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を求める意思を示すこと自体は、カスタマーハラスメントには当たらないとされています。
会社に義務づけられる措置(令和8年10月1日から)
厚生労働省Webマガジンの整理は、次のとおりです。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| ①事業主の方針の明確化と周知・啓発 | カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確にし、労働者に周知・啓発する。カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容も周知する |
| ②相談体制の整備 | 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。窓口の担当者が適切に対応できるようにする |
| ③事後の迅速かつ適切な対応 | 相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認する。事実が確認できたら、速やかに被害を受けた労働者への必要な配慮を行い、再発防止の措置を講じる |
| ④抑止のための措置 | 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、その対処を行える体制を整備する |
| ⑤併せて講ずべき措置 | 相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて周知する。相談したことなどを理由とした不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する |
Q&Aによると、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」も作成しており、事業主は、相談に応じ適切に対応するための体制の整備、被害者への配慮、被害を防止するための取組を行うことが求められています。また、令和7年の法改正の定義(労働施策総合推進法33条1項)は、「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害すること」と説明されています。
働く側ができること|初期対応のポイント
厚生労働省のリーフレット(Q&Aで紹介)によると、現場対応者は、まず誠意ある対応をしながら、状況を正確に把握し、事実確認をします。ただし、顧客等から暴力行為やセクハラ行為を受けた場合は、すぐに現場監督者に相談するなどして事案を引き継ぎ、一人で対応しないことが重要とされています。
発展させないための3つのステップ
- 対象を明確にして謝罪する:「この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」のように、不快感を抱かせたことについて、限定的に謝る。状況が正確に把握できていない段階では、企業として非を認めたような発言はしない。
- 状況を正確に把握する:途中で発言を遮ったり反論したりせず、まず一通り事情を確認する。不明確な点があれば確認し、顧客の勘違いがあれば正しい情報を伝える。
- 現場監督者または相談窓口に情報共有する:要望だけでなく、事実関係をできるだけ時系列で整理して報告する。
場面ごとの対応(リーフレットの例)
| 場面 | 対応の例 |
|---|---|
| 現場(店頭など) | 店頭で対応せず、個室に招いて2人以上で対応する。相手が感情的でも丁寧に冷静に対応し、よく話を聞く。メモをとり、極力議論を避ける。その場しのぎの回答はせず、対応できないことははっきり断る。相手を落ち着かせたいときは、後で確認して回答するなど冷却期間を設ける |
| 電話 | 専用電話を設置して録音できるようにする。第一受信者が責任を持ち、たらい回しをしない。メモを取りながら聞き、復唱して確認する。対応できることとできないことをはっきりさせ、過大な期待を抱かせない |
| 顧客訪問 | 夜間や早朝の訪問は避ける。周囲から聞かれる場所や決められた場所以外には行かない。まず相手の言い分を聞くだけにする。できるだけ2人で行く(1人では対応させない) |
Q&Aには、「コンビニでアルバイトをしているが、客のクレームで同僚が2時間近くクレームを付けられ、土下座を要求されたが、店長はおろおろしているだけだった」という質問があります。回答は、カスタマーハラスメントに対して、会社には適正な対応が求められる、というものです。
困ったときの相談先
- 会社の相談窓口・上司:会社には、10月1日から相談窓口の整備などが義務づけられています。
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室):パワハラやセクハラなどの相談先として、厚生労働省の相談窓口等一覧に載っています(月〜金、祝祭日・年末年始を除く8:30〜17:15)。
- 労働条件相談ほっとライン(0120-811-610):労働条件の電話相談で、セクハラ・パワハラ・マタハラなどについては、専門の相談窓口を案内するのが基本とされています。
カスハラ対策のチェックリスト
- 会社が、カスハラへの対応方針と、相談窓口を、いつ・どこで周知しているか確認する(職場の掲示、社内文書、就業規則など)。
- お客さんから暴力・セクハラを受けたら、すぐに現場監督者に引き継ぐ。一人で対応しない。
- クレーム対応では、不快感について限定的に謝罪し、事実関係をメモに残す。
- 起きたことを、日時・相手・内容・対応の順に、時系列で整理して報告する。
- 会社が対応してくれない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などに相談する。
よくある質問
カスタマーハラスメント対策はいつから義務になりましたか?
令和8年(2026年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になりました。令和7年6月の労働施策総合推進法の改正によるものです。
カスタマーハラスメントとはどんなものですか?
顧客、取引の相手方、施設の利用者などの言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものです。3つをすべて満たすものとされています。
取引先の担当者からの嫌がらせもカスハラになりますか?
「顧客等」には、商品の購入者やサービスの利用者のほか、取引先の担当者(いわゆるBtoB)や、施設の利用者なども含まれます。電話やSNSなどインターネット上の言動も対象です。
会社には何をする義務がありますか?
方針の明確化と周知・啓発、相談窓口の整備、事後の迅速かつ適切な対応、特に悪質なカスハラへの対処の方針と体制の整備(抑止のための措置)、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止などです。
お客さんから暴力を受けそうなときはどうすればいいですか?
暴力行為やセクハラ行為を受けた場合は、すぐに現場監督者に相談するなどして事案を引き継ぎ、一人で対応しないことが重要とされています。被害に遭ったときは、一人で抱え込まず、速やかに上司や相談窓口に報告・相談してください。
出典
- 厚生労働省Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月20日掲載・2026年10月9日確認)
- 山形労働局「令和8年10月1日よりカスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります!」(2026年10月9日確認)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「しつこくクレームをつけてくる客への対応は?」(2026年10月9日確認)
- 厚生労働省「相談窓口等一覧」(2026年10月9日確認)
更新履歴
- 2026年10月9日:記事を公開しました。
