自宅を売って現金を得ながら、そのまま住み続けられる「リースバック」の利用を検討している人向けの記事です。結論として、契約前に賃貸借の種類・期間、家賃の改定条件、買い戻しの価格と期限を書面で確認しておかないと、あとから家賃を値上げされたり、退去を求められたり、買い戻しができなかったりするトラブルにつながります。この記事では、国民生活センターに寄せられた実際のトラブル事例と、国土交通省のガイドブックをもとに、契約前に確認しておきたいポイントを整理します。
- リースバックは自宅を売却し、その後は賃貸借契約(家賃の支払い)で住み続ける仕組み。売却した自宅はもう自分の持ち物ではない。
- 契約後に家賃を値上げされ、応じなければ退去を求められる事例が国民生活センターに寄せられている。
- 買い戻しは「当然の権利」ではない。いつまでに・いくらで買い戻せるかを契約前に確認する必要がある。
- 不動産業者へ自宅を売却する契約にはクーリング・オフが適用されない。契約が成立すると無条件での解除はできない(手付倍返しや違約金による解除はあり得る)。
- 契約を急がされたら、その場で決めず家族に相談し、消費生活センター(188)にも相談する。
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リースバックとは?自宅を売っても住み続けられる仕組みとトラブルが起きやすい理由
リースバックとは、住宅を売却して現金を得たあと、買主(リースバック事業者)と賃貸借契約を結び、毎月家賃を支払うことで、それまで住んでいた自宅にそのまま住み続けるサービスです。国土交通省が公表した「住宅のリースバックに関するガイドブック」(令和4年6月24日公表)でも、リースバックはこのような仕組みとして説明されています。

まとまった現金を一括で受け取れる一方で、住宅の所有権は売却した時点でリースバック事業者に移ります。同ガイドブックは、自宅が自分の持ち物ではなくなるため、設備を変更したい場合はリースバック事業者の承諾が必要になるなど、これまでと同じようには使えなくなる場合があると注意を呼びかけています。また、契約の内容によっては、希望どおりの期間住み続けられるとは限らないともしています。
こうした「売った後も所有者ではなくなる」という仕組みの特徴が、家賃の見直しや更新、買い戻しをめぐるトラブルの背景にあります。次の章から、国民生活センターに実際に寄せられた相談事例を見ていきます。
国民生活センターに寄せられたリースバックのトラブル事例(契約当事者はいずれも70歳代)
国民生活センターは2026年8月4日、「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」と題する注意喚起を公表しました。契約当事者はいずれも70歳代で、次のような事例が紹介されています。

| 事例 | 内容(国民生活センター公表どおり) | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 家賃の値上げ・退去を求められた | 70歳代女性。6年前に築40年のマンションを約1,000万円で売却し、家賃7万円で契約。後に事業者から家賃を約10万円へ値上げすると言われ、応じなければ退去するよう求められた。 | 契約期間中に家賃が見直される条件があるか、更新を断られた場合にどうなるかを契約前に確認する。 |
| 支払い困難を理由にした勧誘・同時契約 | 70歳代女性。リフォーム工事代金が支払えないことを理由にリースバックの利用を勧められ、自宅を1,100万円で売却。同じ日に450万円のリフォーム工事契約も結んでいた。自宅の売却額では3年程しか住み続けられない見込みで、リフォーム工事はクーリング・オフが了承されたが、リースバックの契約解除は断られた。 | 支払いが苦しいときの勧誘や、同時に勧められる別の契約の内容・支払い方法を分けて検討する。 |
| 買い戻し価格の提示 | 70歳代男性。1年前にマンションを200万円で売却し、2年間の定期借家契約を結んで家賃2万円を払い住み続けていた。買い戻しを申し出たところ、事業者から1,000万円の価格を提示された。 | 買い戻しの価格・期限が契約書に明記されているかを、契約前に確認する。 |
国民生活センターはこれらの事例をもとに、売却後もずっと住み続けられるとは限らないこと、契約の仕組みや内容を十分に理解してから契約すること、支払いが苦しいことを理由にしたリースバックの利用には注意が必要なことなどをアドバイスとして挙げています。なお、同ページの本文には相談件数の記載はありませんでした。
家賃の値上げ・更新拒否・退去を求められたときに知っておきたいこと
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。国土交通省のガイドブックによると、借主が契約の継続を希望しても、貸主が更新に応じなくてよいのが「定期借家契約」で、契約の種類によっては希望する期間住み続けられない場合があるとされています。契約締結前に、契約の種類や契約期間、更新・再契約の条件について説明を求め、契約書の記載内容を確認しておくことが案内されています。

家賃についても、同ガイドブックは、リースバックでは事業者が住宅を所有するかたちになるため、修繕費など貸主が負担する費用を踏まえて家賃が設定されているとしています。契約期間中に家賃が見直される(値上げされる)条件があるかどうかは、前の章で紹介した事例のように、契約前に確認しておく必要がある点です。
また、契約条件によっては、リースバック事業者が第三者に住宅を売却し、貸主が変わることもあるとガイドブックは案内しています。貸主が変わった結果、再契約を断られる可能性もあるため、この点もあわせて確認しておきたいところです。
買い戻しの価格や期限をめぐるトラブルと確認しておきたいこと
国土交通省のガイドブックは、「広告等で買い戻せると表示される場合もあるが、契約条件等に注意」としたうえで、買い戻しは「当然の権利」ではなく、一度自宅を買い取った事業者が、条件次第で「もう一度自分に家を売る」という約束ごとに過ぎないと説明しています。買い戻しを望むなら、いつまでに・いくらで買い戻せるのかを、口約束ではなく契約書の記載で確認し、買い戻し価格が自分に払える額かどうかを契約前に検討するよう案内されています。

前の章で紹介した、200万円で売却した自宅の買い戻しに1,000万円を提示された事例のように、買い戻しの価格や期限を確認しないまま契約すると、想定外の負担につながることがあります。買い戻しを希望する可能性が少しでもある場合は、契約前の段階で価格や期限の条件を書面に残してもらうことが重要です。
リースバックの契約前に確認しておきたいことチェック表
ここまでの内容と国土交通省のガイドブックをもとに、契約前に確認しておきたい項目を整理しました。

| 確認する項目 | 契約前に確認しておきたいこと |
|---|---|
| 賃貸借の種類・期間 | 普通借家契約か定期借家契約か。定期借家契約の場合、期間満了時に再契約してもらえる保証はあるか。 |
| 家賃と改定 | 家賃の額の根拠(相場と比べて高くないか)。契約期間中に家賃が見直される条件があるか。 |
| 買い戻しの価格と期限 | いつまでに・いくらで買い戻せるのか。買い戻しの条件が契約書に具体的に記載されているか。 |
| 売却価格の根拠 | 提示された売却価格が相場から大きく外れていないか。複数の事業者に相場や価格の根拠を聞けるか。 |
| 同時に勧められる別の契約 | リフォーム工事など、リースバックと同時に勧められる契約がないか。あれば内容・支払い方法を分けて検討する。 |
| 解約・クーリング・オフ | 不動産業者への自宅の売却にクーリング・オフは適用されない。契約を急かされてもその場でサイン・押印しない。 |
国土交通省のガイドブックは、これらの点について、不動産業者や金融機関など複数の事業者に相談し、家族・親族とも相談しながら、自分のライフプランに合った条件・手法を選ぶよう案内しています。
住宅ローンが払えずリースバックを考えているとき
国民生活センターは、支払いが苦しいことを理由にしたリースバックの利用には注意が必要だとしています。住宅ローンの返済が苦しくなったときは、リースバックを検討する前に、次のような選択肢も確認しておきたいところです。
- 借入先の金融機関へ相談する:返済が難しくなった場合は、まず借入先の金融機関の窓口に相談してください。対応の可否や条件は金融機関ごとに異なります。
- 任意売却:法テラスの案内によると、任意売却とは、裁判所の競売手続によらずに、通常の不動産取引として住宅を売却する手続です。競売よりも高い金額での取引が期待できるとされています。
- 個人再生の住宅資金特別条項:民事再生法によると、個人再生の手続きで住宅ローンについて住宅資金特別条項を定めることで、自己が所有し居住し、床面積の2分の1以上が自己の居住用である住宅について、裁判所が再生債務者の申立てにより抵当権の実行手続(競売)の中止を命じられる場合があります(同法196条1号・197条1項)。滞納分などは再生計画で定める弁済期間内(原則3年、特別の事情があれば5年まで延長可。認可確定から5年を超えることはありません)に支払うことになります(同法199条1項1号・229条2項2号)。利用できるかどうかや具体的な手続きは、弁護士・司法書士に相談することが案内されています。
住宅ローン以外にも、カードローンなど貸金業者からの借入が重なって返済が苦しい場合は、弁護士・司法書士に依頼すると、依頼を受けた旨の通知(受任通知)が届いた時点で、貸金業者からの督促は止まります(貸金業法21条1項9号)。住宅ローンの返済自体は、金融機関との話し合いや、個人再生の住宅資金特別条項などの裁判所の手続きによって条件を見直すことになります。債務整理と住宅ローンの関係は債務整理中に住宅ローンは通った?、任意整理の返済期間の目安は任意整理は何年で返す?もあわせてご確認ください。
どこに相談すればいいか迷ったら、借金問題を扱う司法書士事務所に一度相談してみるのも一つの方法です(借金問題のご相談は【アース司法書士事務所】
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支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。
ライズ綜合法律事務所では、質問に答えるだけで借金の減額相談を無料で申し込めます(匿名でも可)。まずは減らせる可能性があるかだけでも確かめてみてください。
※相談しても必ず減額できるとは限りません。債務整理を依頼する場合は所定の費用がかかります。
よくある質問
リースバックのトラブルにはどんな事例がありますか?
国民生活センターには、契約後に家賃を値上げされて退去を求められた事例、支払いが苦しいことを理由にリースバックとリフォーム工事を同時に契約させられた事例、買い戻しを申し出たら売却額よりはるかに高い価格を提示された事例などが寄せられています。
リースバックで家賃が値上げされることはありますか?
契約内容によっては、契約期間中に家賃が見直される場合があります。国民生活センターには、家賃の値上げに応じないなら退去するよう求められた事例が寄せられており、契約前に家賃の改定条件を確認しておく必要があります。
リースバックの買い戻し価格はどうやって決まりますか?
買い戻しは当然の権利ではなく、一度自宅を買い取った事業者が条件次第で応じる約束ごとです。国土交通省のガイドブックは、いつまでにいくらで買い戻せるかを契約前に契約書で確認するよう案内しています。
リースバックの契約はクーリング・オフできますか?
できません。国民生活センターによると、消費者が不動産業者に自宅を売却する場合、宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフは適用されず、契約が成立すると無条件での解除はできません。
リースバックを利用するのは高齢者が多いのですか?
国民生活センターが公表した事例は、いずれも70歳代の契約当事者によるものでした。ただし、同じページに全体の年代別の相談件数は示されていません。
住宅ローンが払えずリースバックを考えていますが、他に方法はありますか?
借入先の金融機関にまず相談できるほか、任意売却や、個人再生の住宅資金特別条項を使って自宅を残しながら返済を続ける方法もあります。具体的な手続きは弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。
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出典
- 国民生活センター「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」(2026年8月4日公表)
- 国土交通省「『住宅のリースバックに関するガイドブック』を公表しました」(令和4年6月24日公表)
- 法テラス「住宅ローンの支払が困難です。自宅の任意売却という方法はどのようなものですか。」(よくある相談)
- 法テラス公式サイト(法テラス・サポートダイヤルの案内)
- e-Gov法令検索「民事再生法」(第百九十六条・第百九十七条・第百九十九条・第二百二十九条)
更新履歴
2026年9月28日:記事を公開しました。
