在職老齢年金は、老齢厚生年金を受けながら働いて厚生年金に加入している人(70歳以上で厚生年金の適用事業所に勤めている人を含む)の年金が、給与や賞与の額に応じて一部または全部支給停止になる制度です。日本年金機構の公式サイトによると、令和8年度(2026年度)は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額支給され、65万円を超えると、超えた額の2分の1が支給停止になります。令和8年4月から、制度が改正されています。
この記事は、年金をもらいながら働いている人、これから働く予定の人に向けて、日本年金機構の公式サイト「在職老齢年金の計算方法」(2026年4月1日更新)で確認できた内容を、基本月額・総報酬月額相当額の意味、計算式、停止の時期、年金額が見直される「在職定時改定」「退職改定」の順にまとめたものです(2026年10月9日確認)。
- 令和8年度の支給停止調整額は65万円です。基本月額 + 総報酬月額相当額が65万円以下なら、年金は全額支給されます。
- 65万円を超える場合の年金支給月額は、基本月額 −(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 65万円)÷ 2です。
- 支給停止になるのは老齢厚生年金です。老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます。
- 65歳以上70歳未満で厚生年金に加入していると、毎年9月1日を基準に翌月(10月分)から年金額が見直される「在職定時改定」があります。
- 退職すると、退職して1か月を経過したときに、退職した翌月分から年金額が見直されます(退職改定)。70歳に到達したときも、到達した翌月分から見直されます。
在職老齢年金とは?働きながら年金をもらうと減る場合がある
公式サイトによると、70歳未満の人が会社に就職して厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の人が厚生年金保険の適用事業所に勤めた場合には、老齢厚生年金の額と、給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止になる場合があります。これを在職老齢年金といいます。
平成19年4月以降に70歳に達した人が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務している場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます。70歳以上の人は厚生年金保険の被保険者ではないため、保険料負担はありません。
基本月額と総報酬月額相当額とは?
| 用語 | 意味(公式サイトの記載) |
|---|---|
| 基本月額 | 加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額 |
| 総報酬月額相当額 | (その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷ 12 |
70歳以上の人の場合は、標準報酬月額・標準賞与額が、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」になります。
令和8年度の計算方法|65万円を超えた分の2分の1が停止
| 条件 | 年金支給月額(公式サイトの記載) |
|---|---|
| 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下 | 全額支給 |
| 合計が65万円を超える | 基本月額 −(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 65万円)÷ 2 |
65万円は令和8年度の支給停止調整額です。公式サイトには、「令和8年4月から在職老齢年金制度が改正されました」という案内があります。以前の基準額との違いなど、自分にどう影響するかは、年金事務所で確認してください。
計算の例(仕組みの説明用)
基本月額が10万円で、総報酬月額相当額が60万円の人の場合、合計は70万円で65万円を5万円超えます。公式サイトの式にあてはめると、年金支給月額は 10万円 −(10万円 + 60万円 − 65万円)÷ 2 = 10万円 − 2.5万円 = 7.5万円になります。この例は、式の使い方を示すための仮の数字で、実際の支給額ではありません。
注意点
- 年金支給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止になります。
- 老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給されます。
- 厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の年金額をもとに、基本月額を算出します。
- 65歳未満の人の令和4年3月以前の年金については、支給停止の計算方法が異なります(基準額28万円・47万円を使う式)。
参考|令和4年3月以前の65歳未満の人の計算式
公式サイトには、65歳未満の人の令和4年3月以前の年金について、次の計算式が載っています。過去分の年金を確認するときの参考になります。
| 条件 | 年金支給月額 |
|---|---|
| 基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以下 | 全額支給 |
| 総報酬月額相当額が47万円以下で、基本月額が28万円以下 | 基本月額 −(総報酬月額相当額 + 基本月額 − 28万円)÷ 2 |
| 総報酬月額相当額が47万円以下で、基本月額が28万円超 | 基本月額 − 総報酬月額相当額 ÷ 2 |
| 総報酬月額相当額が47万円超で、基本月額が28万円以下 | 基本月額 −{(47万円 + 基本月額 − 28万円)÷ 2 +(総報酬月額相当額 − 47万円)} |
| 総報酬月額相当額が47万円超で、基本月額が28万円超 | 基本月額 −{47万円 ÷ 2 +(総報酬月額相当額 − 47万円)} |
令和4年4月以降の65歳未満の人と、65歳以上の人は、上の「令和8年度の計算方法」の式(支給停止調整額を使う式)で計算されます。支給停止調整額は年度ごとに決まるため、最新の額は、公式サイトの「在職老齢年金の計算方法」で確認してください。
支給停止の期間と、停止額が変わる時期
支給停止になる期間は、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が65万円(令和8年度)を超えている期間です。支給停止額が変わる時期は、総報酬月額相当額が変わった月、または退職日の翌月です(退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入した場合を除く)。
在職定時改定|65歳以上は毎年10月分から年金額が見直される
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の人が、基準日の9月1日に被保険者であるときは、翌月の10月分の年金額から見直されます。これを「在職定時改定」といいます。年金額に反映されていない前年9月から当年8月までの厚生年金に加入していた期間を追加して、年金額が再計算されます。年金額が再計算された結果、支給停止額が変更になる場合があります。
9月1日より前に被保険者の資格を失い、9月1日をまたいで1か月が経過する前に、被保険者の資格を取得したときは、9月1日に被保険者ではなくても、在職定時改定として年金額の再計算が行われます(例:8月25日資格喪失、9月3日資格取得)。
退職したとき・70歳になったとき|退職改定
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている70歳未満の人が、退職して1か月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます(退職改定)。70歳に到達したときは、70歳に到達した翌月分から見直されます。年金額の一部または全部の支給停止がなくなり、全額支給されます。
- 年金額に反映されていない、退職までの厚生年金に加入していた期間を追加して、年金額が再計算されます。
- 退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入したとき(転職など)は、年金額の再計算は行われません。
- 70歳以上の期間は、厚生年金に加入していないため、年金額の再計算には反映されません。
- 再計算で厚生年金の加入期間が20年を超えたときは、加給年金や、配偶者の振替加算が支給される場合があります。その際は、別途、手続きが必要です。
働きながら年金をもらうときに気をつけること
在職老齢年金の判定は、年金の月額と、毎月の給与・賞与から求める総報酬月額相当額で行われます。総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計の12分の1を加えて計算します。繰下げ受給を考えている人は、在職老齢年金で支給停止される部分は繰下げの増額の対象にならない点に注意してください(年金が10月から減った?10月15日支給で振込額が変わる理由では、年金の振込額が変わる仕組みも説明しています)。
在職老齢年金を確認するときのチェックリスト
- 老齢厚生年金の基本月額(加給年金額を除く、報酬比例部分の月額)を確認する。
- 総報酬月額相当額(標準報酬月額 + 直近1年の標準賞与額の合計 ÷ 12)を計算する。
- 2つの合計が65万円(令和8年度)以下かを確認する。超える場合は式で支給月額を求める。
- 65歳以上70歳未満なら、毎年9月1日が在職定時改定の基準日になることを押さえる。
- 退職・転職の予定があれば、退職改定(退職から1か月を経過)の時期を確認する。
- 不明な点は、お近くの年金事務所、ねんきんダイヤルに確認する。
よくある質問
在職老齢年金とは何ですか?
老齢厚生年金を受けている人が厚生年金に加入して働いているとき、老齢厚生年金の基本月額と給与・賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止になる制度です。
在職老齢年金の支給停止の基準額はいくらですか?
令和8年度の支給停止調整額は65万円です。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額支給され、超えると、超えた額の2分の1が年金から支給停止になります。
在職老齢年金で老齢基礎年金は減りますか?
老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給されます。支給停止の対象になるのは、老齢厚生年金です。
在職定時改定とは何ですか?
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の人が、基準日の9月1日に被保険者であるときに、翌月の10月分から年金額が見直される制度です。
退職すると在職老齢年金の支給停止はなくなりますか?
退職して1か月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直され、支給停止がなくなって全額支給されます。退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入した場合は、再計算は行われません。
出典
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(更新日2026年4月1日、2026年10月9日確認)
- 日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」(2026年10月9日確認)
更新履歴
- 2026年10月9日:記事を公開しました。
