令和8年熊本地震の被災地に住んでいた人で、家族が亡くなり、借金を含めた相続をどうするか迷っている人に向けた記事です。法務省は、令和8年8月7日の政令により、相続放棄や限定承認をする期間(熟慮期間)が令和9年3月31日まで延長されたと案内しています。対象者、手続き、期限を過ぎたときの扱いを、法務省の案内で確認できた内容にそって、2026年10月9日現在でまとめます。
この記事は、相続放棄をすすめるものではありません。放棄をすると、借金だけでなく、土地や預貯金などの財産も引き継がないことになります。個別の判断は、家庭裁判所の案内や法テラスの無料相談などで確認してください。
- 相続放棄・限定承認の期限(熟慮期間)は、対象の相続人について令和9年3月31日まで延長されました。
- 対象は、令和8年7月28日に、災害救助法が適用された市町村(21市町村)の区域に住所を有していた相続人です。亡くなった人が被災者かどうかは関係ありません。
- 期限までに決められないときは、3月31日までに家庭裁判所へ「熟慮期間の伸長」の申立てが必要です。
- 何もせずに期限を過ぎると、単純承認(財産も借金もすべて引き継ぐ)とみなされます。
- 相談は法テラス災害ダイヤル 0120-078309(平日9〜21時、土曜9〜17時)へ。
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相続放棄・限定承認と「熟慮期間」とは
人が亡くなると、相続人は、亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぎます。借金などの債務があれば、その債務も引き継ぎます。法務省の案内では、引き継ぎ方の選び方を次のように説明しています。
| 選び方 | 内容(法務省の案内) |
|---|---|
| 相続放棄(民法938条) | 債務を引き継がずにすむ。ただし、土地や預貯金などの財産も引き継がない |
| 限定承認(民法922条) | 債務の額が不明で、財産が残る可能性もあるときなどに、相続で得た財産の限度で債務を引き継ぐ |
| 単純承認 | 財産も債務もすべて引き継ぐ。期間内に放棄・限定承認をしなかった場合は、単純承認をしたものとみなされる |
相続放棄と限定承認は、原則として「自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったことを知った時)」から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。この3か月を熟慮期間といいます。
今回の特例|何が延長されたのか
法務省によると、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律にもとづき、令和8年熊本地震が特定非常災害に指定されました(令和8年8月7日公布・施行)。これにより、通常の熟慮期間の終期が令和8年7月28日以降の日になる場合は、その終期が令和9年3月31日まで延長されます。
法務省の例では、相続人が令和8年6月1日に相続の開始を知った場合、通常の終期は同年9月1日ですが、特例の対象なら、終期は令和9年3月31日となり、同日までに相続放棄や限定承認の申述をすればよいとされています。
対象になる人|令和8年7月28日にどこに住んでいたか
特例の対象は、地震の発生日である令和8年7月28日に、災害救助法が適用された災害発生市町村の区域(対象区域)に住所を有していた相続人です。災害救助法が適用された市町村は、熊本県の次の21市町村です(内閣府「防災情報のページ」で確認できます)。
熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、氷川町、芦北町、津奈木町
法務省が示している判断のポイント
| ケース | 特例の適用(法務省の案内) |
|---|---|
| 住民票は対象区域にないが、7月28日は対象区域で暮らしていた | 家庭裁判所が、住民票、勤務証明書、在学証明書、公共料金の支払に関する記録などから、生活の本拠で判断。住民票がなくても適用される場合がある |
| 7月29日以降に対象区域に住むことになった | 特例は適用されない。ただし、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることはできる |
| 亡くなった人が被災者ではない/財産が対象区域外にある | 関係なし。相続人が7月28日に対象区域に住所を有していれば適用される |
| 相続人が未成年者・成年被後見人 | 本人ではなく、法定代理人(親権者や後見人)が7月28日に対象区域に住所を有していたかで判断 |
| 祖父が亡くなり、その相続人の父が承認・放棄をしないまま亡くなった(息子の熟慮期間) | 息子が7月28日に対象区域に住所を有していたかで判断 |
| 相続人が複数で、一部だけが対象区域にいた | 7月28日に対象区域に住所を有していた相続人だけに適用 |
期限の数え方の例
熟慮期間は、相続人ごとに、自己のために相続の開始があったことを知った時から進みます。法務省は、相続人が複数いる場合、令和8年7月28日に対象区域に住所を有していた相続人だけに特例が適用されると案内しています。たとえば、きょうだいのうち1人だけが対象区域に住んでいた場合、その1人の期限だけが令和9年3月31日まで延び、ほかの相続人の期限は通常どおりです。また、通常の終期が令和8年7月28日より前に来ていた場合は、特例の対象は終期が7月28日以降の日になる人です。
3月31日までに決められないとき|熟慮期間の伸長の申立て
政令は3か月の熟慮期間を令和9年3月31日まで延ばすものですが、家庭裁判所がさらに期間を伸ばすことはできます。法務省は、令和9年3月31日までに相続放棄や限定承認をするかどうかを決められないときは、同日までに家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立てをする必要があると案内しています。申立ては、必要書類を郵送でもできるとされています。
手続きの詳細は、最高裁判所のウェブサイトと、家庭裁判所の家事手続案内で確認できます。7月29日以降に対象区域に住むことになった人も、熟慮期間内に決められない場合は、同じく伸長の申立てができます。
伸長の申立てをしないまま期限が過ぎると
令和9年3月31日までに(熟慮期間がそれより後に満了する場合はその日までに)相続放棄または限定承認をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます。つまり、亡くなった人の財産と借金等の債務をすべて引き継ぐことになります。
借金の相続が不安なとき|相談先
亡くなった人の借金がどのくらいあるか分からないときは、決める前に、借入先や信用情報機関の情報などで確認する方法があります。法律上の扱いは人によって異なるため、早めに相談先を使ってください。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 法テラス災害ダイヤル 0120-078309 | 相続に関する法制度等の問い合わせ。平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00(祝日・年末年始を除く) |
| 家庭裁判所の家事手続案内 | 申立て等の裁判所の手続 |
| 法テラスの無料法律相談 | 令和8年熊本地震の被災者向け。令和9年7月27日まで(首相官邸の被災者支援情報) |
借金の返済や整理そのものに不安があるときは、弁護士・司法書士への相談も選べます。
借金の減額は、弁護士に無料で相談できます
支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。
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あわせて知っておきたい特定非常災害の措置
首相官邸の被災者支援情報には、熟慮期間のほかに、特定非常災害の措置として、法人の破産手続開始の留保(令和10年7月27日まで)、民事調停の申立手数料の免除(令和11年6月30日まで)が掲載されています。免許証・許認可の有効期間の延長など、手続きの特例も同じページに整理されています。
よくある質問
熊本地震で、相続放棄の期限はいつまで延長されましたか?
法務省によると、令和8年熊本地震による災害の発生日(令和8年7月28日)に、災害救助法が適用された市町村の区域に住所を有していた相続人について、相続の承認または放棄をすべき期間(熟慮期間)が令和9年3月31日まで延長されました。政令は令和8年8月7日に公布・施行されています。
対象になるのは、どんな人ですか?
令和8年7月28日に、災害救助法が適用された市町村(対象区域)に住所を有していた相続人です。亡くなった人(被相続人)が被災者かどうか、相続の対象になる財産が対象区域にあるかどうかは関係ありません。対象区域は内閣府の「防災情報のページ」で確認できます。
住民票が対象区域になくても、特例は使えますか?
使える場合があります。7月28日に対象区域に住所を有していたかどうかは、家庭裁判所が、住民票、勤務証明書、在学証明書、公共料金の支払に関する記録などの資料から、生活の本拠が対象区域にあったかどうかで判断します。住民票がなければ適用されない、というわけではありません。
令和9年3月31日までに決められないときは?
特例による延長のあとでも、家庭裁判所が熟慮期間をさらに伸ばすことはできます。令和9年3月31日までに決められないときは、同日までに家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立てをする必要があると、法務省は案内しています。
期限を過ぎると、どうなりますか?
令和9年3月31日までに(熟慮期間が同日より後に満了する場合はその日までに)相続放棄または限定承認をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされ、亡くなった人の財産も借金等の債務もすべて引き継ぐことになります。
相続放棄をすると、財産はどうなりますか?
法務省の案内によると、相続放棄をすると、亡くなった人の債務を引き継がないだけでなく、亡くなった人が持っていた財産(土地や預貯金等の権利)も引き継がないことになります。債務の額が不明で財産が残る可能性もある場合は、限定承認という方法もあります。
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出典
- 法務省「令和8年熊本地震の被災者である相続人の方々へ ~政令により延長された相続放棄等の熟慮期間は、令和9年3月31日までです。~」(令和8年8月7日)
- 首相官邸「令和8年熊本地震 被災者支援情報」
- 写真:CT-May(Wikimedia Commons、CC0)。松山家庭裁判所の写真で、今回の災害とは関係ありません。
更新履歴
- 2026年10月9日:記事を公開しました。
