台風25号でローンが返せないときの「自然災害債務整理ガイドライン」|要件・メリット・手順

台風25号でローンが返せないときの「自然災害債務整理ガイドライン」|要件・メリット・手順

台風25号の影響で住宅ローンなどの返済ができなくなった、または近い将来できなくなりそうな人向けの記事です。一定の要件を満たす個人は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を使い、破産などの法的倒産手続によらず、最も多額のローンを借りている金融機関等へ減免を受けるための手続きを申し出られる場合があります。メリット・注意点、流れを解説します。

先に結論
  • 「令和8年台風第25号に伴う災害」は運営機関の表で適用日が令和8年9月20日とされ(内閣府の発表では、千葉県の市町村は9月20日、東京都大島町は9月21日)、「自然災害債務整理ガイドライン」の対象になる災害に含まれています(運営機関サイトで9月24日現在確認)。
  • 対象になるかは市町村が適用地域かではなく、災害の影響で既往のローンを弁済できない(近い将来できなくなることが確実な)ことに加え、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当するなど一定の要件(7要件)を満たす個人かで判断され、適用市町村以外の人も対象になり得ます。
  • 申し出の窓口は、最も多額のローンを借りている金融機関等です。弁護士等の「登録支援専門家」の手続支援は無料で受けられます。
  • 登録支援専門家の委嘱を受けた後、全ての対象債権者に債務整理を申し出た時点から返済や督促が一時停止になりますが、特定調停の申立て費用は自己負担になるなど無条件で使える制度ではありません。
  • 対象にならない場合や金融機関の同意が得られない場合は、任意整理・個人再生・自己破産といった方法も選択肢になります。
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目次

台風25号は「自然災害債務整理ガイドライン」の対象になる災害です

自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関の公式サイトによると、令和8年9月24日現在、「令和8年台風第25号に伴う災害」は令和8年9月20日(運営機関の表の適用日)に災害救助法が適用された自然災害として、対象となり得る災害の一覧に記載されています。内閣府の9月21日発表では、適用日は千葉県の15市8町1村が9月20日、東京都大島町が9月21日です。同じ一覧には「令和8年8月千葉豪雨」なども含まれています。

台風が過ぎた後の空を見る後ろ姿の人物
※画像はイメージです

注意したいのは、対象になるかどうかは「住んでいる市町村が災害救助法の適用地域かどうか」では決まらない点です。運営機関は、災害の影響で既往のローン等を弁済できない、または近い将来弁済できないことが確実な個人であって、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当するなどの一定の要件を満たした個人が対象となり得るとしたうえで、「本ガイドラインは、災害救助法適用市町村以外にお住まいの方も対象になります」と明記しています。

9月24日、財務省関東財務局の千葉財務事務所長・東京財務事務所長と日本銀行は、台風25号で災害救助法が適用された千葉県内・東京都内の被災者等に対し、金融上の措置を適切に講ずるよう、預貯金取扱金融機関や保険会社などの金融機関に要請しました(「令和8年台風第25号に伴う災害等に対する金融上の措置について」)。要請には、このガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずることも含まれています。全国銀行協会も9月25日、被災者の個人信用情報の取扱いに全国銀行個人信用情報センター会員へ十分な留意を要請し、本ガイドラインの周知や相談対応も要請しました。市町村が適用地域かは内閣府「防災情報のページ」で確認できます。

自然災害債務整理ガイドラインとは?ローンの減免を申し出られる制度

自然災害債務整理ガイドラインは、自然災害の影響で住宅ローンや事業性ローンなどの既往債務を弁済できなくなり、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当するなど一定の要件を満たす個人が、これらの手続によらず金融機関等(対象債権者)との合意にもとづいて債務の全部または一部の減免を受けられるようにする準則です。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」が平成27年12月に策定し、その後改正されています。

銀行窓口で書類をやり取りする手元
※画像はイメージです

運営機関のリーフレット(令和8年7月版)は、利用するメリットとして次の3点を挙げています。

メリット運営機関の説明(要旨)
手続支援を無料で弁護士等の「登録支援専門家」(弁護士・公認会計士・税理士・不動産鑑定士)による手続支援を無料で受けられます。なお、特定調停手続の利用に関する費用は債務者ご自身の負担です。
義援金等に加え財産の一部を手元に残せる具体的には、債務者の被災状況や生活状況などの個別事情により異なります。
個人信用情報として登録されない債務整理をしたことが個人信用情報として登録されないため、新たな借入れに影響が及びません。

第10項(2)のとおり、対象債権者は原則、債務整理を信用情報登録機関に報告・登録しませんが、弁済計画を履行できず信用情報登録機関への報告事由が発生した場合は、報告・登録されます(Q&A Q.10-3)。登録支援専門家の委嘱後、申出時点(第6項(3))から弁済の受領、追加担保の要求や担保権の実行、強制執行などを控えるとされ(一時停止)、法的拘束力はありません(第7項(1)、第2項(1))。

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被災ローン減免制度の対象になる要件

ガイドライン第3項(1)は、対象となり得る個人の債務者について、次のすべての要件を満たすことを求めています。

書類をファイルに整理する手元
※画像はイメージです
  1. 住居や勤務先などの生活基盤、事業所・事業設備・取引先などの事業基盤が災害の影響を受けたことで、住宅ローン・住宅のリフォームローン・事業性ローンなどの既往債務を弁済できない、または近い将来弁済できないことが確実と見込まれること
  2. 弁済について誠実であり、財産状況(負債の状況を含む)を対象債権者に適正に開示していること
  3. 災害が発生する以前に、対象債権者への債務について期限の利益喪失事由(延滞など)に該当する行為がなかったこと(当該債権者の同意がある場合を除く)
  4. 破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとって経済的な合理性が期待できること
  5. 事業の再建・継続を図る事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること
  6. 反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと
  7. 破産法第252条第1項(第10号を除く)に規定する免責不許可事由がないこと

運営機関のQ&Aによると、①は資力を欠き既往債務全般を約定どおり返済できない状態(破産手続の「支払不能」に相当)、または近い将来その状態が確実な場合(民事再生手続の「支払不能のおそれ」に相当)を指します。災害の影響には、勤め先の被災による失業や給料の減少、取引先や顧客の被災による売上げの減少のような間接的なものも考えられるとされています(Q&A Q.3-1)。また、債権者が1名でも活用は可能で、カードローンや自動車のローンも対象ですが、災害発生後の借入れは対象になりません。

デメリット・注意しておきたいこと

運営機関の公式資料は「デメリット」の見出しでは整理していませんが、ガイドライン本文やQ&A、手続の流れなどから次の注意点が確認できます。

  • 全ての要件を満たす必要がある:7つの要件をひとつでも欠くと対象になりません。災害前に延滞などがあると、その債権者の同意がない限り利用できません。
  • 主たる債権者の同意が前提:主たる債権者(最も多額のローンの貸し手)は、申出から10営業日以内に同意・不同意を回答します。要件に該当しないことが明白な場合、不同意になることがあります。正当な理由なく着手の同意書面の交付がない、または遅れている場合は、主たる債権者が属する業界団体の苦情・相談窓口に連絡できます(Q&A Q.5-2。窓口はQ&Aの別紙)。
  • 弁済計画は原則5年以内:調停条項案に記載する債務弁済計画は原則5年以内です。
  • 資産をすべて残せるわけではない:将来の継続的な収入の見込みがない場合、破産法上の「自由財産」など通常残せる財産を除き、保有資産を処分・換価して弁済に充てるのが原則です。
  • 特定調停の申立て費用は自己負担:登録支援専門家の手続支援は無料ですが、特定調停の申立て費用は債務者の負担です。運営機関の表では、令和8年熊本地震など、災害によっては特定調停の申立手数料の免除が記載されていますが、台風25号は9月24日現在、その欄に記載がありません(免除は災害救助法が適用された市町村に住所、居所、営業所又は事務所を有していた人に限られます)。
  • 信用情報登録に例外がある:不履行時は報告・登録される場合があります。

申し出から手続きが終わるまでの流れ

運営機関の「手続の流れ」ページによると、自然災害・コロナ共通で次の7段階で進みます。

手続きの流れをノートに書き留める手元
※画像はイメージです
段階内容(運営機関の説明どおり)
1. 手続着手の申出最も多額のローンを借りている金融機関等へ着手を申し出る(受付窓口は当該金融機関へ確認)。
2. 専門家への支援依頼金融機関等の同意後、地元弁護士会などを通じ運営機関に「登録支援専門家」の支援を依頼する。
3. 債務整理(開始)の申出金融機関等へ申出書や財産目録などを提出する。申出後は返済や督促が一時停止となる。
4. 「調停条項案」の作成登録支援専門家の支援を受け、金融機関等との協議で調停条項案を作成する。
5. 調停条項案の提出・説明登録支援専門家経由で金融機関等へ提出・説明する(1カ月以内に同意可否を回答)。
6. 特定調停の申立て全ての借入先の同意後、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる(費用は債務者負担)。
7. 調停条項の確定特定調停手続で調停条項が確定すれば債務整理が成立する。

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※相談しても必ず減額できるとは限りません。債務整理を依頼する場合は所定の費用がかかります。

ガイドラインと任意整理・個人再生・自己破産の違い

運営機関のQ&Aによると、破産法や民事再生法にもとづく法的倒産手続は裁判所が密接に関与し法律の定めに従って行われる手続きです。一方、このガイドラインは特定調停を経るものの、関係当事者の合意により整理する手続きで、信用情報登録機関への登録・報告を行わない点も異なります。

ガイドライン任意整理個人再生・自己破産
手続きの主体対象債権者との合意+特定調停債権者との話し合い(裁判所を通さない)裁判所が密接に関与する法的倒産手続
信用情報への登録登録しない(第10項(2)。報告事由発生時は例外あり)登録される場合がある(下記関連記事)登録される場合がある(下記関連記事)
専門家費用手続支援は無料。特定調停の申立て費用と、自分で依頼した弁護士等の報酬(Q&A Q.5-6)は自己負担依頼費用がかかる場合がある(本人交渉も可)裁判所費用は必要。弁護士等費用は場合による

信用情報への影響や返済期間の目安は、ブラックリストは何年で消える?や任意整理は何年で返す?、自己破産するとできないこともあわせてご確認ください。

対象にならない場合・返済が難しいとき

運営機関のQ&Aによると、異議や同意不成立などで債務整理が成立しなかった場合、状況に照らし法的倒産手続の利用が相当なときはそれらの利用が考えられるとされています。対象外や同意不成立の場合は、任意整理・個人再生・自己破産の検討が選択肢です。

相談先に電話をかける後ろ姿の人物
※画像はイメージです

台風25号の被災で生活費そのものが不足している場合は、どこからも借りれない時の公的支援や、台風25号の罹災証明書・支援金・ローンの猶予まとめもあわせて確認してください。相談先に迷う場合は、法テラスの民事法律扶助(資力基準の条件あり)による無料相談や、弁護士・司法書士への相談も選択肢です。弁護士・司法書士に依頼し受任通知が届くと、貸金業者の督促は原則止まります。

ガイドラインの手続きには、注意したい点もあります。手続支援を行う登録支援専門家は、債務者・債権者のいずれにも利害関係を有しない者として推薦・委嘱された専門家で、債務者が自分で選ぶことはできません(Q&A Q.5-3)。登録支援専門家の支援に加えて自分で代理人弁護士等を選んで依頼することは差し支えありませんが、その弁護士等への報酬は債務者が支払う必要があります(Q&A Q.5-6)。

どこに相談すればいいか迷ったら、借金問題を扱う司法書士事務所に一度相談してみるのも一つの方法です(借金問題のご相談は【アース司法書士事務所】)。司法書士が代理で交渉できるのは1社あたり140万円以下の借金が対象です。

借金の減額は、弁護士に無料で相談できます

支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。

ライズ綜合法律事務所では、質問に答えるだけで借金の減額相談を無料で申し込めます(匿名でも可)。まずは減らせる可能性があるかだけでも確かめてみてください。

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よくある質問

自然災害債務整理ガイドラインとは何ですか?

自然災害の影響で住宅ローンや事業性ローンなどを弁済できなくなり、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当するなど一定の要件を満たす個人が、法的倒産手続によらず金融機関等との合意で債務の全部または一部の減免を受けられる準則です。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」が平成27年12月に策定し、その後改正されています。

台風25号でも自然災害債務整理ガイドラインの対象になりますか?

運営機関の公式サイトでは、令和8年9月24日現在、「令和8年台風第25号に伴う災害」(運営機関の表の適用日は令和8年9月20日。内閣府の発表では東京都大島町は9月21日)はこのガイドラインの対象となり得る災害の一覧に含まれています。ただし対象になるには、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当するなど個人の要件(7要件)も満たす必要があります。

自然災害債務整理ガイドラインのメリットは何ですか?

運営機関のリーフレットは、登録支援専門家による手続支援を無料で受けられること、義援金等に加えて財産の一部を手元に残せること、債務整理をしたことが個人信用情報として登録されないことの3点をメリットとして挙げています。ただし弁済計画を履行できなければ報告・登録される場合があります。

自然災害債務整理ガイドラインのデメリットはありますか?

ガイドラインの本文や公式資料からは、要件をすべて満たす必要があること、主たる債権者の同意が前提になること、将来の収入見込みがない場合は自由財産を除く資産を処分・換価するのが原則であること、特定調停の申立て費用は自己負担になることが確認できます。

被災ローン減免制度はどこに申し出ればいいですか?

最も多額のローンを借りている金融機関等(主たる債権者)へ、手続着手を希望することを申し出ます。受付窓口は借入先の金融機関に確認してください。

ガイドラインの対象にならない場合はどうすればいいですか?

債務整理が成立しなかった場合で破産手続や民事再生手続の利用が相当なときは、これらの法的倒産手続の利用が考えられるとされています。任意整理・個人再生・自己破産のほか、法テラスや弁護士・司法書士への相談も選択肢です。

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出典

更新履歴

2026年9月29日:記事を公開しました。

2026年9月29日:関東財務局などによる金融上の措置の要請について、要請した機関と要請先を公表文どおりに訂正しました。

2026年9月29日:ガイドラインの要件と、専門家への依頼に関する注意を追記しました。

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