内定取消されたら|解雇と同じ扱いで合理的な理由が必要、契約更新を断られる雇止めの要件も

内定取消されたら|解雇と同じ扱いで合理的な理由が必要、契約更新を断られる雇止めの要件も

厚生労働省の「確かめよう労働条件」Q&Aによると、採用内定は、一般に「解約権を留保した労働契約を結んだ状態」と考えられ、内定を取り消すことは「解雇」として扱われます。そのため、内定の取消には、解雇としての合理的な理由が必要です(労働契約法16条)。同じように、有期労働契約を更新してもらえない「雇止め」も、一定の要件を満たす場合は、会社が更新の申込みを拒絶できないことがあります(労働契約法19条)。

この記事は、内定を取り消された人、面接で答えたことが理由で内定を取り消されないか不安な人、契約の更新を打ち切られそうなパート・契約社員の人に向けて、「確かめよう労働条件」のQ&A(内定や内々定の取消・辞退、面接での虚偽回答、契約更新の見込み)で確認できた内容を、内定・内々定・雇止めの順にまとめたものです(2026年10月9日確認)。個別のケースは、労働局や労働基準監督署などの相談窓口で確認してください。

先に結論
  • 採用内定の取消は解雇として扱われ、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合」は無効になります(労契法16条)。
  • 内定取消が有効とされるのは、取消の事由が、内定当時知ることができず、知ることが期待できなかった事実で、取消が客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限られます(大日本印刷事件、最高裁)。
  • 内々定は、内定ほど契約の認識に至っていないことが多いものの、拘束の度合いが強ければ「採用内定」と認められることもあります。
  • 家族に関することなど、本人に責任のない事項を面接で聞くことは、就職差別につながるおそれがあります。
  • 有期契約の更新を拒否される場合、一定の要件を満たせば、使用者は従前と同一の条件で更新の申込みを受けたとみなされます(労契法19条)。
スポンサーリンク
目次

内定を取り消されたとき|解雇と同じ扱い

Q&Aによると、採用内定に法的な定義はなく、態様もさまざまですが、一般的には、労働者と使用者の間で、一定の始期と、採用内定通知書や誓約書に書かれた取消事由が生じた場合は解約できるという解約権を留保して、労働契約を結んだ状態を指すことが多いと考えられます。この状態で、すでに労働契約が成立しているのであれば、使用者から内定を取り消すことは、一方的な契約破棄になります。

  • 内定取消の場合には、解雇としての合理的な理由が必要です(労契法16条)。労働者は、その理由を開示してもらう必要があります。
  • 採用内定通知のほかには、労働契約を結ぶための特段の意思表示が予定されていない場合は、採用内定により、始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められることが多いと考えられています。
  • 内定取消は解雇に当たり、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利の濫用として無効になります。

内定取消が有効になるのはどんなとき?

Q&Aは、採用内定取消が解雇として有効とされるのは、原則として、次の2つの場合に限られると考えられるとしています(大日本印刷事件、最高裁昭和54年7月20日判決)。

  1. 取消の事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。
  2. その事実を理由として内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できること。

具体的に考えられる内定の取消事由として、Q&Aは、①契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、②健康状態の悪化、③重要な経歴詐称、④重要な必要書類を提出しないこと、⑤その他の不適格事由を挙げています。経営状況の悪化による内定取消も考えられますが、この場合は、基本的に整理解雇に準じて、人員整理の必要性、解雇回避の努力義務、解雇対象者の選定の合理性、手続の妥当性の4要素を踏まえて、有効性が判断されると考えられます。

面接で事実と違うことを答えてしまった場合

Q&Aには、「採用面接で家庭のことを詳しく聞かれ、心ならずも父親について虚偽の答えをしてしまった。発覚すると内定取消になるのか」という質問があります。回答は次のとおりです。

  • 厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重し、本人の適性・能力に基づく「公正な採用選考」を行うよう求めています。
  • 家族に関することなど、本人に責任のない事項を把握することは、就職差別につながるおそれがあります。
  • 採用面接で虚偽の事実を述べたことが取消の理由にされることはあるが、それが有効かどうかはケースバイケースで、一概には決められない。ただし、内定の取消は、重大な事由がある場合に限られる。
  • この事例では、父親について虚偽の回答をしても、応募者の労働者としての適性や能力には関係がないため、それ自体で内定取消は認められないと考えられる。そもそも、父親について面接で聞くこと自体が適切ではない。

内々定・内定の辞退|損害賠償は?

場面考え方(Q&A)
内定の辞退基本的に問題ないが、あまりに信義則に反する場合は、損害賠償を求められる可能性もある。ただし、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできず、責任は損害賠償にとどまる
内々定の取消(会社側)多くの場合、内定段階ほど契約の認識に至っていないため、解雇ではないと考えられる。ただし、拘束の度合いが強ければ「採用内定」と認められ、労働契約が成立していると判断されることもある。合理的な理由なく内々定を破棄すれば、期待権の侵害として損害賠償責任を負うことがある
内々定の辞退(学生・労働者側)職業選択の自由(憲法22条1項)があるため、内々定の辞退が違法になることは「殆んど考えにくい」とされる

行政による規制

Q&Aによると、採用内定取消事案については、ハローワークが一元的に把握して企業を指導し、次のような一定の場合には、学生などの適切な職業選択に資するため、その内容を公表できるとされています。

  • 2年度以上連続して行われたもの
  • 同一年度内に10名以上の者に対して行われたもの
  • 事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかに認められないときに行われたもの
  • 内定取消の対象となった新規学校卒業者に、取消を行わざるを得ない理由について十分な説明を行わなかったとき
  • 就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき
スポンサーリンク

契約更新を打ち切られそうなとき|雇止めの要件

Q&Aには、「期間を定めた労働契約を結んでいるが、いつ契約を打ち切られるか不安だ。会社から今後の契約更新の見込みを明らかにしてもらうことは可能か」という質問があります。回答のポイントは次のとおりです。

  • 契約を結ぶとき、更新するときには、更新する場合の基準に関する事項が明示されます。令和6年4月1日施行の改正後は、無期転換の要件となる通算契約期間や、有期労働契約の更新回数に上限がある場合の上限も明示しなければならなくなりました。
  • 会社が更新を拒否する場合に備えて、無期転換権を行使しておくことが有効です。無期転換権の要件は、①通算期間が5年を超えている、②契約更新回数が1回以上ある、③同一の使用者との間で契約している、の3つです。
  • 無期転換権が有効に行使されれば、期間満了による雇止めではなく解雇になるため、正当な事由が必要になります(労契法16条)。
  • 無期転換権を行使する前に、期間の途中で解雇された場合は、労契法17条1項により、「やむを得ない事由がある場合」でなければ解雇できません。

労働契約法19条の雇止め法理

期間満了時に使用者に更新を拒否された場合、労働契約法19条の要件を満たさなければ、雇止めは無効になる可能性があります。要件は、労働者が契約期間の満了日までの間に更新を申し込んだ場合、または期間満了後遅滞なく有期労働契約の申込みをした場合で、次の①または②に当たり、使用者が申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときです。この場合、使用者は、従前の労働条件と同一の条件で、労働者の申込みを受諾したものとみなされます。

  1. 過去に反復して更新されたことがあり、契約期間の満了前に更新しないことで契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約の労働者に解雇の意思表示をすることと、社会通念上同視できると認められること。
  2. 労働者が、期間満了時に契約が更新されると期待することについて、合理的な理由があると認められること。

内定取消・雇止めに遭ったときのチェックリスト

  1. 内定通知書・誓約書に書かれた取消事由と、取消を告げられた日時・内容をメモする。
  2. 会社に、取消の理由を文書で示してもらうよう求める。
  3. 雇止めの場合は、契約期間の満了日までに(または満了後遅滞なく)、更新を希望する旨を伝える。書面などで記録を残す。
  4. 無期転換の要件(通算5年超、更新1回以上、同一の使用者)を満たしているかを確認する。
  5. 新規学校卒業者の内定取消は、最寄りのハローワークにも相談する。
  6. 労働局や労働基準監督署、夜間・休日は労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)に相談する。
スポンサーリンク

よくある質問

内定取消は自由にできますか?

できません。内定の取消は解雇として扱われ、解雇としての合理的な理由が必要です(労契法16条)。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になります。

面接で嘘を言ったら内定取消になりますか?

虚偽の事実を述べたことが取消の理由にされることはありますが、有効かどうかはケースバイケースで、一概には決められません。内定の取消は、重大な事由がある場合に限られます。Q&Aの個別の事例(父親についての虚偽回答)では、応募者の適性や能力に関係のない事項であり、それ自体で内定取消は認められないと考えられるとされています。

内定を辞退したら損害賠償を請求されますか?

内定辞退は基本的に問題ありませんが、あまりに信義則に反する場合は、損害賠償を求められる可能性もあります。ただし、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできません。

内々定を取り消されたらどうなりますか?

内々定の取消は、多くの場合、解雇ではないと考えられます。ただし、拘束の度合いが強ければ内定と認められることがあり、合理的な理由なく破棄した場合は、期待権の侵害として損害賠償責任を負うことがあります。

契約の更新を断られたら、何もできませんか?

労働契約法19条の要件を満たす場合、雇止めは無効になる可能性があります。契約期間の満了日までに、または満了後遅滞なく更新を申し込み、使用者の拒絶が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の条件で、更新の申込みを受諾したものとみなされます。

出典

更新履歴

  • 2026年10月9日:記事を公開しました。
目次