預金口座を差し押さえられたら|取立ては1週間後・給料は4週間後・範囲変更の申立て

預金口座を差し押さえられたら|取立ては1週間後・給料は4週間後・範囲変更の申立て

裁判所から差押命令が届いて、銀行口座の預金が差し押さえられていると分かったら、「いつ取られるのか」「生活費の口座でも取られるのか」が心配になるはずです。この記事では、民事執行法と大阪地方裁判所の案内をもとに、預金の差押えの仕組み、債権者が取り立てられる時期、差押禁止債権の範囲変更の申立てを整理します。

先に結論
  • 差押命令は、債務者と銀行の話を聞かずに出されます。差押えの効力は、銀行(第三債務者)に送達された時に生じます(民事執行法145条)。
  • 債権者が取り立てられるのは、債務者に差押命令が送達された日から1週間経過後です。給料などは4週間です(155条)。
  • 生活に著しい支障が出るときは、差押禁止債権の範囲変更を、取立てが終わる前に申し立てます(153条)。
  • 申立てだけでは支払は止まらず、支払の一時禁止の決定も必要です。借金が減るわけではありません。
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目次

預金の差押えは、事前の連絡なく始まる

民事執行法145条によると、債権執行の差押命令は、債務者と第三債務者(預金なら銀行)を審尋しないで、つまり、話を聞かずに出されます。裁判所は、差押命令で、債務者に債権の取立てなどを禁止し、第三債務者に債務者への弁済を禁止します。差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じます。そのため、債務者には、差押えの効力が生じたあとで、裁判所から差押命令が届くことになります。

差押命令が出る前には、民事執行法22条の債務名義(確定判決、仮執行の宣言を付した支払督促、強制執行に服する旨の陳述がある公正証書など)が必要です。裁判所から届いた書類を放置していないかは、支払督促が届いたらや訴状が届いたらで確認してください。差押えの前提となる財産調査の手続は、財産開示手続とは?で解説しています。

差押命令が届いてから、取立てまでの流れ

段階内容(民事執行法)
差押命令裁判所(執行裁判所)が、債務者に債権の取立てなどを禁止し、第三債務者(預金なら銀行)に債務者への弁済を禁止する。債務者と第三債務者の話は聞かずに出される(145条1項・2項)
送達差押命令は、債務者と第三債務者に送達される(145条3項)。差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じる(同条5項)
教示裁判所書記官は、差押命令を送達するとき、債務者に、153条の差押命令の取消しの申立てができる旨などを教える(145条4項)
取立て債権者は、債務者に差押命令が送達された日から1週間が経過したとき、債権を取り立てることができる。取り立てられるのは、債権者の債権と執行費用の額まで(155条1項)

債権者が取り立てる前でも、債務者が、差し押さえられた預金を、銀行から引き出すことはできません。大阪地方裁判所の案内でも、差押禁止債権の範囲変更を申し立てても、審理の間は差押えの効力が続くため、預貯金を引き出すことはできない、とされています。

なお、第三債務者(銀行など)は、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を、債務の履行地の供託所に供託することができます(156条1項)。

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取立てまでの期間:預金は1週間、給料は4週間

民事執行法155条は、金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる、と定めています。ただし、給料などの152条1項各号に掲げる債権や、退職手当などの152条2項の債権が差し押さえられた場合は、1週間ではなく4週間です(養育費などの義務に係る金銭債権が請求債権に含まれているときを除く)。大阪地方裁判所の案内を、表にまとめます。

差し押さえられた債権債権者が取り立てられる時期(大阪地方裁判所の案内)
預貯金など(下の2つ以外の金銭債権)債務者が債権差押命令正本を受け取ってから1週間経過後
生計維持のための継続的給付、給料・賃金・俸給・退職年金・賞与、退職手当など債務者が債権差押命令正本を受け取ってから4週間経過後(請求債権に養育費・婚姻費用などの金銭債権が含まれているときは1週間経過後)

大阪地方裁判所は、申立日が令和2年4月1日より前のものは、請求債権や差押債権の種類にかかわらず、債務者が差押命令正本を受け取ってから1週間経過後となる、と案内しています。給料の差押えの限度額(原則として手取りの4分の3は差し押さえてはならず、養育費などの請求では2分の1)は、給料の差し押さえはいくらまで?で解説しています。

差押禁止債権の範囲変更の申立てとは

民事執行法153条1項は、執行裁判所が、申立てにより、債務者と債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部もしくは一部を取り消すことができる、と定めています。大阪地方裁判所の「差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A」では、差押えによって、一般的な生活水準と比較して債務者の生活に著しい支障が生じる場合、たとえば、生活保護費や公的年金などの公的給付の振込口座が差し押さえられて、生活が成り立たなくなる場合などに、債務者の申立てにより、差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決める制度、と説明されています。

  • 申立先:債権差押命令を出した裁判所(大阪地方裁判所の場合は、大阪地方裁判所)
  • 費用:申立手数料はかからず、通信費用などとして郵便切手の予納が必要(大阪地方裁判所の場合は、郵便切手5,000円分。当事者が1人増えるごとに各切手を2枚ずつ追加)
  • 必要なもの(大阪地方裁判所の例):申立書2通、郵便切手のほか、世帯構成、世帯の収入・支出、資産・負債など生活状況が分かる書類(陳述書、家計収支表、源泉徴収票、給与明細書、預貯金口座の通帳の写しなど)、世帯全員の住民票の原本
  • 期限:債権者が取立てをすることができる時期の前に申し立てる。取立完了後や、転付命令が確定した後は、申立てができない(大阪地方裁判所)

必要な書類や切手の額は、裁判所ごとに異なる場合があります。申し立てる裁判所に確認してください。

申立てだけでは止まらない:支払の一時禁止の決定

大阪地方裁判所の案内では、範囲変更の申立てをしただけでは、第三債務者の債務者に対する支払行為を止めることはできないため、第三債務者に対し、支払の一時禁止を命じる決定を得る必要がある、とされています。預貯金の差押えの場合は、債権者が取立てをしてしまったら、この申立ての利益がなくなるため、併せて支払の一時禁止の申立てをする必要があります。

民事執行法153条3項は、範囲変更の申立てがあったとき、執行裁判所が、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、または立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる、と定めています。この決定に対しては、不服を申し立てることができません(同条5項)。

申立てを却下する決定に対しては、債務者は執行抗告ができ、申立てを認める決定に対しては、債権者が執行抗告できます(大阪地方裁判所の案内)。

範囲変更が認められやすいケースと、限界

大阪地方裁判所の案内は、解説書や公刊されている裁判例に基づく一般的な説明として、生活保護費や公的年金が振り込まれている預貯金口座の債権の差押えを受けた人や、給料に類似している報酬債権の全部を差し押さえられた人の利用を目にする、としています。生活保護費や公的年金の振込口座の場合は、その預貯金の原資が、これらの公的給付であることの立証も必要です。給料の差押えを受けた人より、公的給付の振込口座の差押えを受けた人の方が、申立てが認められることが多いように感じられる、とも書かれています。

一方で、案内は、次のことに注意するよう呼びかけています。

  • 申立てをしても、希望どおりの決定が出るとは限らない
  • 決定が出ても、差押えの効力を、全部または一部受けないだけで、債務が減るわけではない。完済までの期間が延びて、遅延損害金が増えることもある
  • 執行裁判所は公正中立な立場なので、この手続を選ぶべきかどうかや、生活再建についての相談は受けられない。法律の専門家に相談する

借金そのものを整理する選択肢

範囲変更で債務は減らないため、借金の返済のめどが立たないときは、債務整理を検討します。破産法42条によると、破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行で、破産債権に基づくものはすることができず、すでにされている強制執行は、破産財団に対しては効力を失います。民事再生法39条によると、再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行などはすることができず、すでにされているものは中止します。

自己破産は自己破産のメリット・デメリット、費用は自己破産の費用はいくら?、個人再生は個人再生とは?、任意整理は任意整理のメリット・デメリットで解説しています。督促を無視したときの流れは督促状を無視し続けるとどうなる?で整理しています。費用が心配なときは、債務整理の費用が払えないときで整理した法テラスの立替制度があります。

相談は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)でも案内を受けられます。差押えを避けようとして、「審査なし」をうたう業者や個人間融資、給与ファクタリングから借りるのは、貸金業の登録がない違法な貸付である可能性が高いため、やめてください。

借金の減額は、弁護士に無料で相談できます

支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。

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まとめ

  1. 預金の差押命令は、債務者と銀行の話を聞かずに出される。差押えの効力は、銀行に送達された時に生じる。
  2. 債権者が取り立てられるのは、債務者に差押命令が送達された日から1週間経過後(給料・退職手当などは4週間)。
  3. 差し押さえられた預金は、引き出せない。範囲変更を申し立てても、審理の間は引き出せない。
  4. 生活保護費や公的年金の振込口座などで、生活が成り立たないときは、取立てが終わる前に範囲変更と支払の一時禁止を申し立てる。
  5. 範囲変更では債務は減らない。返済のめどが立たなければ、債務整理を弁護士・司法書士に相談する。

よくある質問

預金口座を差し押さえられたら、事前に連絡はありますか?

民事執行法145条2項により、差押命令は、債務者と第三債務者(銀行)の話を聞かずに出されます。差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じ、債務者には、あとで裁判所から差押命令が送達されます。

差押命令が届いてから、債権者はいつ取り立てられますか?

民事執行法155条により、債務者に差押命令が送達された日から1週間が経過したときです。給料・賞与・退職手当などの場合は4週間です(養育費などの請求債権が含まれているときは1週間)。取り立てられるのは、債権者の債権と執行費用の額までです。

差し押さえられた預金を、引き出せますか?

引き出せません。大阪地方裁判所の案内では、差押禁止債権の範囲変更を申し立てても、審理する間は差押えの効力が続くため、預貯金を引き出すことはできない、とされています。

差押禁止債権の範囲変更とは、何ですか?

差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じるとき、債務者の申立てにより、差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決める制度です(民事執行法153条、大阪地方裁判所)。申立手数料はかからず、郵便切手などの予納が必要です。

範囲変更を申し立てれば、取立てを止められますか?

申立てだけでは、第三債務者の支払は止まりません。大阪地方裁判所の案内では、支払の一時禁止を命じる決定を得る必要があり、預貯金の差押えでは、債権者が取立てをしてしまうと申立ての利益がなくなるため、併せて支払の一時禁止を申し立てる必要があります。

範囲変更が認められたら、借金はなくなりますか?

なくなりません。差押えの効力を、全部または一部受けないだけで、債務が減るわけではありません。完済までの期間が延びて、遅延損害金が増えることもあります(大阪地方裁判所)。

出典

更新履歴

2026年10月9日:記事を公開しました。

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