令和8年熊本地震の影響で、休業や教育訓練、出向で従業員の雇用を維持したい事業主に向けた記事です。厚生労働省は、令和8年8月に、雇用調整助成金の特例措置を発表しました。熊本県の事業所だけでなく、全国の事業所も、地震に伴う経済上の理由で事業活動を縮小する場合は対象です。対象は、令和8年7月28日から令和9年1月27日の間に開始した休業等です。厚生労働省の発表とリーフレット(令和8年8月25日更新)で確認できた内容を、2026年10月9日現在でまとめます。
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成する制度です。この記事は、助成金の支給を約束するものではありません。受給には審査があります。
- 対象は、熊本地震に伴う経済上の理由で事業活動を縮小する事業所。全国が対象です(取引先の被災などでも)。
- 休業等の初日が令和8年7月28日〜令和9年1月27日のものが対象。上限は1年間で100日です。
- 生産指標の確認期間が3か月→1か月に短縮。計画届は事後提出も可能です。
- 熊本県内の事業所は、さらに残業相殺のルールと、教育訓練の実施率による助成率引き下げのルールが撤廃されます。
- 施設や設備が地震で直接被害を受けた場合も、経済上の理由(修理業者の手配や部品調達に期間を要する等)があれば対象です。
特例措置の内容
| 項目 | 通常 | 今回の特例 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 対象事業所 | 施設・設備の損壊に伴う事業活動の休止・縮小は助成対象外 | 地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業所が対象。直接被害でも、経済上の理由があれば対象 | 全国 |
| 生産指標の確認期間 | 最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べて10%以上減少していること | 比較期間を最近1か月とし、迅速な特例適用を可能とする | 全国 |
| 雇用量要件 | 最近3か月の雇用量(労働者と派遣労働者の合計)の平均が、前年同期比で5%超かつ6名以上(中小企業は10%超かつ4名以上)増加していると対象外 | この要件を撤廃 | 全国 |
| 事業所設置後1年未満 | 雇用保険適用事業所設置後1年未満の事業主は対象外 | 令和8年7月28日時点で設置後1年未満の事業主も対象(生産指標は地震発生日前のいずれかの1か月と比較) | 全国 |
| 計画届 | 休業等を行うにあたり、事前の提出が必要 | 事後の提出も可能 | 全国 |
| 残業相殺 | 休業等をさせる一方で所定外労働を行わせた場合、支給対象の休業等の延べ日数から、所定外労働時間分を控除 | この取り扱いを撤廃 | 熊本県内のみ |
| 教育訓練の実施状況による助成率の引き下げ | 支給日数が30日を経過した日以降の期間で、教育訓練の実施率が10%未満の場合、助成率を引き下げ | この取り扱いを撤廃 | 熊本県内のみ |
用語の補足です。「生産指標」は、販売量、売上高等の事業活動を示す指標です。通常は、最近3か月間の月平均値が前年同期と比べて10%以上減少している事業所であることが要件ですが、今回は比較期間を最近1か月とします。厚生労働省は、これらの特例措置について、労働政策審議会職業安定分科会で審議のうえ答申を得ており、速やかに関係省令を公布して施行するとしています。
「経済上の理由」の具体例
厚生労働省のリーフレットは、令和8年熊本地震に伴う「経済上の理由」(経済的な取引関係の悪化・困難等の事情)として、次の5つを挙げています。
- 需要の減少または風評被害による販売または集客の困難
- 取引先の被災による、原材料や商品等の取引困難
- 交通の途絶による、製品や原材料などの運送、従業員の通勤などの生産及び販売環境の悪化
- 電気、水道及びガス等の供給や通信の途絶または困難による生産及び販売環境の悪化
- 損壊した施設または設備等の修理業者の手配または修理部品の調達等に関して、災害の影響等により期間を要する場合
令和8年熊本地震に伴い、施設や設備が直接的な被害を受けて事業活動を休止・縮小する場合でも、その休止・縮小が上記の理由を伴うものであれば、「経済上の理由」があるものとして取り扱うとされています。
対象期間と日数の上限
| 項目 | 内容(厚生労働省) |
|---|---|
| 対象 | 令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により休業、教育訓練または出向を行う事業主で、休業等の初日が令和8年7月28日から令和9年1月27日までのもの |
| 助成の期間 | 1年の期間内に実施した休業等が助成の対象 |
| 上限日数 | 1年間で100日。上限日数に達した場合は、上限日数までが助成対象 |
| 目安 | 週5日勤務の事業所で、週の半分を休業させた場合は、約10か月助成金を受けられる |
申請前に確認すること
- 雇用保険の適用事業所であること(その他の要件は、雇用調整助成金特設ページのガイドブックで確認)。
- 申請した事業主は、提出または提示した書類の写し等を、支給決定日の翌日から5年間保存する必要があります。
- 休業等の初日が令和9年1月27日までのものが対象です。計画届は事後提出もできますが、期限は、お近くの都道府県労働局・ハローワークに確認してください。
- 中小企業庁は、被災した中小企業・小規模事業者向けに、特別相談窓口の設置、災害復旧貸付等の実施、セーフティネット保証4号の適用、既往債務の返済条件緩和の対応、小規模企業共済災害時貸付の適用、官公需を含めた中小受託事業者との適正取引に関する配慮要請などの支援措置を実施しています(厚生労働省のリーフレット)。
公的な支援の全体像は、お金が必要なのにどこからも借りれない時の最終手段と公的支援でも整理しています。
働く人にとっての意味と、ほかの相談先
雇用調整助成金は、事業主が受け取る助成金です。厚生労働省のリーフレットでは、休業、教育訓練または出向によって労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものと説明されています。従業員にとっては、会社が休業させても、雇用を維持しながら、休業手当等が支払われやすくなる制度、という位置づけです。会社が制度を使うかどうかは、事業主の判断と手続きによります。申請や審査の結果によっては、助成が受けられない場合もあります。熊本県の事業所で働いている人も、取引先の被災などで全国の事業所で働いている人も、会社が対象になる可能性があります。
首相官邸の「令和8年熊本地震 被災者支援情報」には、厚生労働省関連として、雇用調整助成金の特例のほか、雇用保険の特別措置、特別労働相談窓口、労働基準法等に関するQ&A、人材開発支援助成金が並んでいます。休業中の賃金や、解雇・雇止めの不安は、お近くの労働基準監督署やハローワークにも相談できます。
よくある質問
熊本地震の雇用調整助成金の特例は、全国の事業所も対象ですか?
厚生労働省の発表によると、令和8年熊本地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業所が対象で、特例措置のうち、生産指標の確認期間の短縮、雇用量要件の撤廃、設置後1年未満の事業主の対象化、計画届の事後提出は、全国の事業所が対象です。熊本県内の事業所は、これに加えて、残業相殺のルールと、教育訓練の実施状況に応じて助成率を引き下げるルールの撤廃も対象です。
特例の対象になる期間は?
発災日(令和8年7月28日)から令和9年1月27日の間に開始した休業等が対象です。特例は、1年の期間内に実施した休業等が助成の対象で、上限日数(1年間で100日)に達した場合は、上限日数までが助成対象となります。たとえば、週5日勤務の事業所で週の半分を休業させた場合は、約10か月助成金を受けられます(厚生労働省のリーフレット)。
地震の被害で設備が壊れた場合も対象ですか?
通常は、施設や設備の損壊に伴う事業活動の休止・縮小は助成の対象になりませんが、今回は、地震により施設や設備が直接的な被害を受けた場合でも、経済上の理由があれば対象とされます。経済上の理由の例として、損壊した施設や設備の修理業者の手配や、修理部品の調達等に関して、災害の影響により期間を要することが挙げられています。
「経済上の理由」とは、どんなケースですか?
厚生労働省のリーフレットでは、(1)需要の減少または風評被害による販売または集客の困難、(2)取引先の被災による、原材料や商品等の取引困難、(3)交通の途絶による、製品や原材料などの運送、従業員の通勤などの生産及び販売環境の悪化、(4)電気、水道及びガス等の供給や通信の途絶または困難による生産及び販売環境の悪化、(5)損壊した施設または設備等の修理業者の手配または修理部品の調達等に関して災害の影響等により期間を要する場合、の5つが挙げられています。
計画届は、休業の前に出す必要がありますか?
通常は、助成対象となる休業等を行うにあたり、事前に計画届の提出が必要ですが、今回の特例では、事後の提出も可能です。
申請の際の注意点は?
厚生労働省のリーフレットによると、雇用保険の適用事業所であることなどの要件があります。また、雇用調整助成金を申請した事業主は、提出又は提示した書類の写しその他支給要領に規定する各種書類を、支給決定日の翌日から起算して5年間保存する必要があります。詳細は、雇用調整助成金特設ページのガイドブックで確認してください。
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出典
- 厚生労働省「令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します」(2026年8月)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年熊本地震の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置を実施します」(令和8年8月25日更新)
- 写真:Suikotei(Wikimedia Commons、CC BY 4.0)。熊本県の阿蘇公共職業安定所(ハローワーク)の写真で、今回の被害を写したものではありません。トリミングし、文字を加えるなど加工しています。
更新履歴
- 2026年10月9日:記事を公開しました。
