「年金を担保にお金を借りられる」という勧誘を受けたり、年金が入る口座の通帳を預けるよう求められたりしたことはありませんか。年金を担保にした貸付けは、国の制度が2022年3月末で終了しており、それ以降は例外なく違法です。この記事では、厚生労働省と福祉医療機構の案内、貸金業法の条文をもとに、禁止されている行為、過去の被害例、困ったときの公的な窓口を整理します。
- 年金担保貸付制度は令和4年(2022年)3月末で申込受付を終了しました。以後、年金を担保にした借入れは例外なく違法です(厚生労働省)。
- 貸金業者は、年金証書・通帳・キャッシュカードの預かりや、年金口座からの自動振替を求めることが禁止されています(貸金業法20条の2)。
- 過去には、担保価値のない物を質に取る「偽装質屋」など、年金を実質的な担保にして高金利で貸す被害がありました。
- 困ったときは、自立相談支援機関・生活福祉資金・188・法テラス・JCCOに相談します。
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年金を担保にお金を借りるのは、例外なく違法
厚生労働省の「違法な年金担保融資にご注意ください」には、年金担保貸付制度は、令和4年(2022年)3月末で申込受付を終了した、年金受給権を担保とした金銭の借入申込を受けることは法律で禁止されている、と書かれています。「年金を担保にお金を借りられます」などと宣伝して借入れを勧誘することは、例外なく全て違法、とされています。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)も、年金担保貸付制度と労災年金担保貸付制度は、令和4年3月末で新規申込の受付を終了し、それ以降に年金受給権を担保とした金銭の借入申込を受けることは、例外なく、全て違法となるため、いかなる場合でも絶対に利用しないでください、と呼びかけています。日本貸金業協会も、国民年金および厚生年金保険に基づく年金受給権を担保とした融資は、福祉医療機構のみ実施が認められていた(2022年3月末で新規申込受付終了)ため、この機関以外が年金受給権を担保とした借入申込を受けた場合は、例外なく違法な融資、と説明しています。
貸金業法が禁止している行為
| 貸金業者が行うことが禁止されている行為(厚生労働省・福祉医療機構) | 内容 |
|---|---|
| 借入意欲をそそる表示・説明 | 広告・勧誘にあたって、年金受給者の借入意欲をそそるような表示または説明を行うこと |
| 年金証書・通帳・カードの預かり | 融資の契約について、年金が振り込まれる口座から融資の返済を受けることを目的として、借入者に対し、年金証書、預金通帳やキャッシュカードなどの引き渡し・提供を求め、またはこれらを保管すること |
| 年金口座からの自動振替 | 借入者に対し、年金が振り込まれる口座からの自動振替を金融機関に依頼するよう求めること |
貸金業法20条の2は、貸金業を営む者が、公的給付(法令の規定により譲り渡し、担保に供し、または差し押さえることができないこととされているもの)が受給権者の預金口座に払い込まれた場合に、その口座から貸付けの弁済を受けることを目的として、預金通帳等や年金証書の引渡し・提供を求めたり保管したりする行為や、口座の払出しと弁済を金融機関に委託して行うよう求める行為をしてはならない、と定めています。年金、生活保護費、児童手当などの差押えが禁じられている給付の範囲は差し押さえられないものは?で整理しています。
過去の被害例:偽装質屋など
厚生労働省のQ&Aによると、平成16年頃、悪質な業者が、年金受給者から年金証書や預金通帳等を担保に預かり、高金利で貸付けを行う違法な年金担保融資が社会問題となりました。平成25年度には、高齢者等に対して、担保価値のない物品を質に取り、実際には年金などを担保として高金利で貸付けを行う、いわゆる「偽装質屋」による被害が各地で発生しました。
福祉医療機構のページは、被害事例として、平成25年5月30日に、質屋の業務を装い高金利で貸付けし、年金受給口座から自動引き落としで回収していたとして、福岡県警が貸金業法違反および出資法違反の疑いで質屋店社長らを逮捕した例、平成21年6月18日に、高齢者の年金証書などを担保に高金利で金を貸したとして、神奈川県警が貸金業の実質経営者らを逮捕した例、平成19年2月21日に、年金や生活保護費が振り込まれる預金通帳などを預かり、これを担保に金を貸したなどとして、沖縄県警が金融業者を逮捕した例を挙げています。
違法な貸付けや、登録のない業者の見分け方は貸金業者の登録を確認する方法、給与ファクタリング・個人間融資は違法?で解説しています。
「保証金を先に払えば貸す」は詐欺:融資保証金詐欺
日本貸金業協会は、融資を持ちかけて金銭をだまし取る「融資保証金詐欺」にも注意するよう呼びかけています。個人の場合、SNS等の投稿で貸付けの勧誘を行い、融資の約束をし、保証金などの名目で電子マネーにチャージさせたり現金を振り込ませたりした後、融資を実行しないまま連絡を絶ってだまし取る手口があります。協会は、正規の貸金業者が融資を前提に金銭の支払いを要求することはない、としています。年金を担保にする話と同様に、お金に困っている高齢者が狙われやすいので、家族や周囲の人も、通帳を預ける・保証金を先に払うといった話を聞いたら、すぐに相談先につなげてください。
年金が振り込まれる口座の預金は、差押えを受ける場合があることにも注意が必要です。口座が差し押さえられたときの対応は預金口座を差し押さえられたらで解説しています。
生活資金に困ったときの、公的な窓口
厚生労働省は、生活資金の工面や多重債務で困っている場合には、まず自立相談支援機関や多重債務相談窓口などに問い合わせるよう案内しています。必要に応じて、社会福祉協議会が実施する低所得者世帯等を対象とした「生活福祉資金貸付制度」(貸付けできる内容が年金担保貸付と異なる)があります。このほかに、ひとり親を対象とする貸付制度(母子父子寡婦福祉資金貸付金)、医療費の自己負担分が高額になった場合に一定の金額を超えた分があとで払い戻される高額療養費制度、埋葬費の支給などの支援制度があります。
生活福祉資金の条件は生活福祉資金とはで整理しています。
多重債務の相談窓口(厚生労働省の案内)
- 金融庁:多重債務についての相談窓口
- 消費生活相談窓口:188(お住まいの地域の窓口を案内)
- 法テラス:0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)
- 弁護士会・司法書士の相談窓口、市区町村の無料法律相談
- 日本クレジットカウンセリング協会(JCCO):0570-031640。厚生労働省のページでは、月曜日〜金曜日の10:00〜12:40、14:00〜16:40(12月28日〜1月4日と祝日等を除く)と案内されています。詳細はJCCOの無料借金相談で整理しています
- 日本貸金業協会・警察:日本貸金業協会は、被害にあわないために「甘いキャッチフレーズは怪しいと思う」「うまい話は疑ってみる」「おかしいと思ったら信頼できる機関にすぐ相談」と呼びかけ、相談先として日本貸金業協会(0570-051-051)、消費者ホットライン(188)、警察相談専用電話(#9110)を挙げています
債務整理の費用が心配なときは債務整理の費用が払えないとき、方法の比較は債務整理4種類の違いで解説しています。年金を担保に借りてしまった、または年金通帳を預けてしまった場合は、すぐに警察、消費生活センター(188)、弁護士・司法書士などに相談してください。
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※相談しても必ず減額できるとは限りません。債務整理を依頼する場合は所定の費用がかかります。
まとめ
- 年金担保貸付制度は、令和4年(2022年)3月末で申込受付を終了した。以後、年金を担保にした借入れは例外なく違法。
- 貸金業者が、年金証書・通帳・キャッシュカードを預かることや、年金口座からの自動振替を求めることは禁止されている。
- 年金などの公的給付は、法律で差押えが禁じられている(国民年金法24条など)。
- 偽装質屋など、年金を実質的な担保にした高金利の貸付けの被害が過去にあった。
- 生活資金や借金で困ったときは、自立相談支援機関、生活福祉資金、188、法テラス、JCCOなどに相談する。
よくある質問
年金を担保にして、お金を借りることはできますか?
できません。年金担保貸付制度は令和4年(2022年)3月末で申込受付を終了し、それ以降に年金受給権を担保とした金銭の借入申込を受けることは、例外なく違法です(厚生労働省、福祉医療機構)。
「年金を担保に貸します」という業者は、合法ですか?
いいえ。「年金を担保にお金を借りられます」などと宣伝して借入れを勧誘することは、例外なく全て違法です(厚生労働省)。
貸金業者は、年金の通帳やキャッシュカードを預かってもよいですか?
いいえ。貸金業法20条の2は、公的給付が払い込まれる口座から弁済を受けることを目的として、預金通帳等や年金証書の引渡し・提供を求めたり保管したりすることを禁止しています。
年金が振り込まれる口座から、返済を自動で引き落とす約束は有効ですか?
年金が振り込まれる口座からの自動振替を金融機関に依頼するよう借入者に求めることは、貸金業法により禁止されています(厚生労働省、福祉医療機構)。
お金に困ったときは、どこに相談しますか?
自立相談支援機関や多重債務相談窓口、消費生活相談窓口(188)、法テラス(0570-078374)、JCCO(0570-031640)などです。社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度もあります(厚生労働省)。
出典
- 厚生労働省「違法な年金担保融資にご注意ください」
- 独立行政法人福祉医療機構「違法な年金担保融資にご注意ください」
- 日本貸金業協会「悪質な金融業者にご注意!」
- e-Gov法令検索「貸金業法」(第20条の2)
更新履歴
2026年10月9日:記事を公開しました。
