令和8年熊本地震で住まいや仕事に被害を受け、住宅ローンなどの返済が難しくなった人がいます。破産などの手続によらずに債務を整理できる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」について、運営機関は令和8年熊本地震を対象に追加したと案内しています。この記事では、運営機関の案内とガイドライン本文をもとに、対象の確認方法、条件、手続の流れ、費用、信用情報の扱い、悪質業者への注意を整理します。2026年10月10日時点の内容です。
- 運営機関のサイトで、令和8年熊本地震(適用日 令和8年7月28日)が対象の自然災害に追加されています(2026年10月10日確認)。
- 債務の免除や減額には借入先の同意が必要で、ガイドライン自体に法的拘束力はありません。まずローンの借入先の金融機関等に相談します。
- 登録支援専門家(弁護士等)の手続支援は無料。債務整理の申出後は返済や督促が一時停止になり、信用情報には登録されません(運営機関・ガイドライン)。
- ガイドラインの利用を口実に報酬を求める業者や偽サイトに注意してください。
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令和8年熊本地震は、ガイドラインの対象になっている
一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関(以下「運営機関」)のサイトでは、2026年7月29日のお知らせで、災害救助法が適用された自然災害に「令和8年熊本地震」を追加した、と案内しています。同サイトの「被災された皆さまへ」(令和8年10月1日現在)の一覧では、令和8年熊本地震の適用日は令和8年7月28日で、「義援金等差押禁止」は対象、「特定調停申立手数料免除」は令和11年6月30日までとされています(2026年10月10日に確認)。
「特定調停申立手数料免除」には注記があり、災害救助法が適用された市町村に住所、居所、営業所または事務所を有していた人に限られます。一方で、運営機関は、このガイドラインは災害救助法適用市町村以外に住んでいる人も対象になる、とも書いています。自分が対象になるか、どの制度が使えるかは、借入先の金融機関等に確認してください。この記事は、運営機関の案内をもとに仕組みを整理したもので、個別の手続の可否を決めるものではありません。
自然災害債務整理ガイドラインとは
運営機関によると、このガイドラインは、災害救助法の適用を受けた自然災害の影響を受けたことで、住宅ローン、住宅のリフォームローンや事業性ローン等の既往債務を弁済できなくなった個人の債務者について、破産手続等の法的倒産手続によらずに、債権者と債務者の合意にもとづいて債務整理を行う際の準則です。ガイドライン本文は、この準則は法的拘束力はないものの、金融機関等である対象債権者、債務者その他の利害関係人によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている、と書いています。つまり、手続を申し出れば必ず債務が減るわけではなく、債権者の同意が必要です。
法的倒産手続との違いは、運営機関のQ&Aで、特定調停の手続を経る点にあります。裁判所が一定関与しますが、基本的には関係当事者の合意により債務を整理していく手続です。破産や再生などの法的倒産手続では、裁判所が破産管財人や監督委員を選任し、裁判所の密接な関与のもとで進みます。破産や個人再生との違いは債務整理4種類の違い、自己破産の場合の制限は自己破産中の制限と復権で解説しています。
対象となる人の条件
ガイドライン本文は、次のすべての要件を備える個人の債務者が、このガイドラインにもとづく債務整理を申し出ることができる、と定めています。
- 住居、勤務先等の生活基盤や、事業所、事業設備、取引先等の事業基盤などが災害の影響を受けたことによって、既往債務を弁済できない、または近い将来弁済できないことが確実と見込まれること
- 弁済について誠実であり、財産状況(負債の状況を含む)を対象債権者に適正に開示していること
- 災害が発生する以前に、対象債権者に対して負っている債務について、期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと(債権者の同意がある場合を除く)
- ガイドラインにもとづく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
- 事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること
- 反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと
- 破産法252条1項(10号を除く)に規定する免責不許可事由がないこと
対象債権者の範囲は、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合、政府系金融機関、貸金業者、リース会社、クレジット会社、債権回収会社、信用保証協会、その他の保証会社等の金融機関等です。免責不許可事由の内容は免責不許可事由とはで解説しています。
手続の流れ(運営機関の案内)
| 手順 | 内容(運営機関の案内) |
|---|---|
| 1 手続着手の申出 | 最も多額のローンを借りている金融機関等に、ガイドラインの手続着手を希望することを申し出る。借入先、借入残高、年収、資産(預金など)の状況を聞かれることがある。必要な事項を聞き終えた日が手続着手の申出日になる |
| 2 専門家による手続支援を依頼 | 金融機関等の同意が得られた後、地元弁護士会などを通じて運営機関に「登録支援専門家」による手続支援を依頼する。登録支援専門家は、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士(弁護士以外は一部業務を実施できない) |
| 3 債務整理(開始)の申出 | 金融機関等に債務整理を申し出て、申出書と財産目録などの必要書類を提出する。申出後は、債務の返済や督促は一時停止となる |
| 4 「調停条項案」の作成 | 登録支援専門家の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ書類を作成する |
| 5 「調停条項案」の提出・説明 | 登録支援専門家を経由して金融機関等に提出・説明する。金融機関等は1か月以内に同意するか否かを回答する |
| 6 特定調停の申立て | 債務整理の対象にしようとするすべての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる(申立費用は債務者の負担) |
| 7 調停条項の確定 | 特定調停手続で調停条項が確定すれば、債務整理が成立する |
ガイドライン本文によると、主たる債権者(債務整理の対象にしようとする債権の元金総額が最大の者)は、手続着手の申出を受け付けてから10営業日以内に、手続に着手することへの同意または不同意の意思表示を書面で行います。債務者が要件に該当しないことが明白である場合を除き、不同意を表明してはならず、不同意とする場合は理由を書面に明記しなければなりません。債務整理の申出の時点から一時停止の期間が始まり、債務者は一部の債権者にだけ弁済すること、通常の生活または事業の過程によるもの以外で資産を処分することなどを差し控える必要があります。
費用と、手続を使うことの意味
- 登録支援専門家の支援は無料:運営機関のチラシは、弁護士等の「登録支援専門家」による手続支援を無料で受けられる、と案内しています。ただし、特定調停手続の利用に関する費用は債務者の負担です
- 個人信用情報に登録されない:ガイドライン本文は、ガイドラインにもとづく債務整理を行った債務者について、対象債権者は債務整理を行った事実などを信用情報登録機関に報告、登録しない、と定めています。運営機関のチラシも同じ趣旨を案内しています
- 義援金等は差押禁止:運営機関の一覧では、令和8年熊本地震は義援金等差押禁止の対象です。「自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律」の施行により、令和3年1月1日以後に発生した自然災害について、交付を受けた自然災害義援金は差押禁止になります。差押えが禁止される財産は差し押さえられないものは?で整理しています
- 保証人:ガイドライン本文は、保証人(個人に限る)に対する保証履行は、保証契約の経緯や保証人の責任の度合い、収入・資産、災害による影響の有無などを考慮して相当と認められる場合を除き、求めないこととする、と定めています
債務の免除や減額には、債務者の財産、収入、信用、債務総額、返済期間などを総合的に考慮した一定の要件を満たすことと、ローンの借入先の同意が必要である、と運営機関のチラシにも注記されています。弁済計画は原則5年以内とされ、債務の減免を求める場合の弁済総額は、破産手続による回収の見込みと同等以上になるなど、債権者にとって経済的な合理性が期待できる内容でなければなりません。
うまくいかなかったときと、悪質な業者への注意
運営機関のQ&Aは、債権者から異議が述べられた場合や、すべての対象債権者の同意が得られない場合など、ガイドラインにもとづく債務整理が成立しなかったときは、状況に照らして破産手続や民事再生手続を利用することが考えられる、と説明しています。差押えや強制執行の仕組みは強制執行とはで解説しています。
運営機関のチラシは、金融庁、財務局および運営機関が、他の事業者に本件事業等を委託することはなく、ガイドラインを利用するための支援と称して報酬を求める悪質業者等に注意するよう呼びかけています。運営機関のトップページにも、運営機関をかたる偽サイトの存在が確認されている、という注意喚起が出ています。ガイドラインの利用は、ローンの借入先の金融機関等に直接相談する、と運営機関は案内しています。
相談先
まず、ローンの借入先の金融機関等に相談します。そのうえで、法律面の整理や手続の進め方に不安があるときは、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)や、弁護士会・司法書士会の窓口を使えます。費用が心配なときは債務整理の費用が払えないときで整理した法テラスの立替制度があります。多重債務の相談は、JCCOの多重債務ほっとライン(0570-031640)でも受け付けています(JCCOの無料借金相談)。
災害を理由に「審査なし」で貸す、返済を肩代わりする、手続を代行して手付金を取る、とうたう業者や、SNSでの個人間融資、給与ファクタリングは、貸金業の登録がない違法な貸付や詐欺である可能性が高いため、使わないでください。
借金の減額は、弁護士に無料で相談できます
支払いが遅れると、遅延損害金がかかります。返済が難しいときは、早めに専門家へ相談すると、返済の負担を見直せる場合があります。任意整理・個人再生・自己破産のどれが合うかは、借入額や収入によって変わります。
ライズ綜合法律事務所では、質問に答えるだけで借金の減額相談を無料で申し込めます(匿名でも可)。まずは減らせる可能性があるかだけでも確かめてみてください。
※相談しても必ず減額できるとは限りません。債務整理を依頼する場合は所定の費用がかかります。
まとめ
- 令和8年熊本地震は、運営機関のサイトで自然災害債務整理ガイドラインの対象に追加されている(適用日 令和8年7月28日)。
- 対象は、災害の影響でローン等を弁済できない個人の債務者で、7つの要件がある。債権者の同意が必要で、法的拘束力はない。
- 手続は、最大債権者への申出、登録支援専門家の支援、債務整理の申出、調停条項案、特定調停の7段階。申出後は返済と督促が一時停止になる。
- 専門家の支援は無料。債務整理の事実は信用情報に登録されない。義援金等は差押禁止。
- 悪質業者や偽サイトに注意し、まずローンの借入先に相談する。
よくある質問
令和8年熊本地震は、自然災害債務整理ガイドラインの対象ですか?
運営機関のサイトでは、令和8年熊本地震(適用日 令和8年7月28日)が、災害救助法が適用された自然災害として追加されています(2026年10月10日に確認)。個別の手続の可否は、借入先の金融機関等に確認してください。
ガイドラインを使えば、ローンは必ず減りますか?
いいえ。債務の免除や減額には一定の要件を満たすことと借入先の同意が必要で、ガイドライン自体に法的拘束力はありません。成立しなかったときは、破産手続や民事再生手続の利用が考えられます(運営機関)。
どこに申し込めばよいですか?
最も多額のローンを借りている金融機関等に、手続着手を希望することを申し出ます。運営機関は、ローン借入先の金融機関等へ直接相談するよう案内しています。
費用はかかりますか?
運営機関によると、登録支援専門家による手続支援は無料です。特定調停手続の費用は債務者の負担ですが、令和8年熊本地震は、災害救助法適用市町村に住所等があった人について、特定調停申立手数料が令和11年6月30日まで免除とされています。
信用情報に傷がつきますか?
ガイドライン本文は、ガイドラインにもとづく債務整理を行った債務者について、対象債権者は債務整理の事実などを信用情報登録機関に報告、登録しない、と定めています。
出典
- 自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関(トップページ・お知らせ)
- 運営機関「被災された皆さまへ」(令和8年10月1日現在の対象災害一覧)
- 運営機関「手続の流れ」
- 運営機関「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインについて」
- 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(本文)
- 同 Q&A
- 運営機関チラシ「大規模災害に被災された皆さまへ」(2026.7)
更新履歴
2026年10月10日:記事を公開しました。
